『奪い愛、真夏』シリーズ完結作に相応しいラストに 新ジャンル“タイムリープ不倫”を確立

真夏は時夢と暮らし始めた海辺の田舎町で、トラックに轢かれてしまう。タイムリープでやり直し、真夏を助けるのは三子。あと2回、タイムリープできる時計を差し出されるが、真夏は「もう、戻らない」と時計を受け取ることはなかった。やり直しの効かない人生を進む、その選択も真夏の覚悟だ。大丈夫、時夢が一緒の時を刻んでくれる。
ようやく聞こえた愛する時夢の声、それに「海野さん」ではなく念願だった「真夏」呼びに、満面の笑みで振り向く真夏=松本まりかの表情も印象的だが、ラストに黒で塗りつぶされた真夏と時夢の笑顔の絵も衝撃的だ。未来に写真を送ったのは言うまでもなく元也であり、その嫉妬心をエネルギーにして画家として作品を描きながら、今も時夢を愛していることが痛いほどに伝わってくる。
そして、特筆すべきはラストに登場した倉科カナ演じる光とその子供・春である。2017年に放送された『奪い愛』シリーズの原点『奪い愛、冬』(テレビ朝日系)のラストもまた、光と信(大谷亮平)が自分の人生に後悔したくないという思いから、海辺の田舎町で一緒に暮らす道を進んだ。その後、信は癌で亡くなるものの、光のお腹には信との子供がいた。その名前が春である。背格好から察するに、放送年から数えて8歳くらいという設定なのだろうか。「お母さん、時間は自分で作るものだよ」というセリフも見事だが、倉科カナの顔を全く映さないという贅沢な使い方にも驚きを隠せないのと同時にこれまでシリーズを観てきたファンだけが分かる絶妙な塩梅だなとも思う。
というのも、この『奪い愛、真夏』は『奪い愛、冬』のセルフオマージュとも言えるポイントが数多くちりばめられている。真夏と時夢が廃校のプールで熱い口付けを交わす様子を間近で目の当たりにしていた未来が叫ぶ「ずっと見てたよー!」は、『奪い愛、冬』の蘭(水野美紀)の「ここにいるよー!」を意識したものだ。ほかにも波乱のWデートやサレ妻が会社に乗り込んで不倫を暴露するという展開、そして今回の海辺の田舎町。ちなみに、『奪い愛、夏』(ABEMA)で桜(水野美紀)がソムリエとしての嗅覚を頼りにクンカクンカと鼻を鳴らす仕草は、今作で未来と真夏が継承してもいる。
『奪い愛、真夏』数々の名シーンはどう生まれた? “シリーズ生みの親”鈴木おさむが明かす
2017年の『奪い愛、冬』(テレビ朝日系)からスタートした『奪い愛』シリーズ最新作となる『奪い愛、真夏』(テレビ朝日系)は、さま…“タイムリープ”という新たな要素を取り込みながら、もう一度『奪い愛、冬』をなぞっていった『奪い愛、真夏』。筆者が鈴木おさむにインタビューした際には、もう一つ『奪い愛』としてのギミックのアイデアがあることを明かしてくれた一方で、「全うしたのかなと思ってます」という一言に、最終回を観て納得せざるを得なかった。
さまざまな登場人物たちが愛を奪い合う“激しくも切ないドロキュン恋愛ドラマ”『奪い愛』シリーズの最新作。結婚までも約束した最愛の恋人と不倫の末に別れた主人公の恋模様を描く。
■配信情報
金曜ナイトドラマ『奪い愛、真夏』
TVer、TELASAにて配信中
出演:松本まりか、安田顕、高橋メアリージュン、森香澄、白濱亜嵐、石井正則、石山順征、谷原七音、水野美紀
脚本:鈴木おさむ
演出:樹下直美、上田迅
ゼネラルプロデューサー:横地郁英(テレビ朝日)
プロデューサー:川島誠史(テレビ朝日)、神通勉(MMJ)、小路美智子(MMJ)
音楽:沢田完
主題歌:安田レイ「BROKEN GLASS」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
制作:テレビ朝日、MMJ
©テレビ朝日
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