大根仁、次回作は『地面師たち』続編ではなく「とんでもない敵に立ち向かう男たちの話」

大根仁、次回作は『地面師たち』続編ではない

 Netflixの日本でのサービス開始から10周年を記念したトークパネル「Creators' Spotlight(クリエイターズ・スポットライト)」が、9月4日に東宝スタジオで行われた。

 2015年9月に日本でのサービスを開始し、2025年9月に10周年を迎えるNetflix。今回行われた「Creators' Spotlight」では、Netflixの歴代作品に関わるプロデューサーや監督、俳優、制作陣が登壇し、「これまでのブレイクスルー(突破)と次なるチャレンジ」をテーマに、彼ら手がけてきた作品における秘蔵エピソード、今後の作品づくりやNetflixに期待することなどが語られた。

Netflix共同最高経営責任者のグレッグ・ピーターズ

 まず登場したのは、Netflix共同最高経営責任者のグレッグ・ピーターズ。「アジアで初めてNetflixを立ち上げることになった2015年、その拠点としてまず日本にオフィスを開設しました。それから10年。日本国内の登録世帯数は1,000万世帯を超え、『ネトフリ』と親しみを込めて呼んでいただける存在になりました。日本発の作品は、これまでに累計約250億時間視聴され、非英語作品としては世界で2番目に多く観られています。120作品以上の日本作品が、非英語作品のグローバルTOP10入りを果たし、さらに各国別のTOP10でも、アジアからラテンアメリカに至るまで、93カ国でTOP10入りを果たしています。日本国内においては、これまでに37都道府県、200以上のロケ地で撮影を行うなど、2021年から2024年の4年間で日本への投資による経済波及効果(Gross Value Added / GVA)は4,500億円を超えています。これらの数字が示す通り、日本はNetflixにとって不可欠な市場です。私たちは次の10年も、日本の文化とクリエイティビティを世界へ届け、想像を超えるエンターテインメント体験を生み出していきます」と、これまでの歩みと今後の展望について語った。

Netflixコンテンツ部門バイス・プレジデントの坂本和隆

 続いて、コンテンツ部門バイス・プレジデントの坂本和隆が登壇。「この10年、数え切れない挑戦を重ねてこられたのは、ファンの皆様、クリエイター、そしてパートナーの皆様のおかげです。私たちは、たとえ題材が難しくても確かなビジョンを信じるからこそ、オーセンティックな作品を届けられると考えています。これが私たちの大切にしている『クリエイティブファースト』です。さらに、日本のクリエイターと真正面から向き合い、日本の視聴者に愛される物語を生み出すこと。その挑戦がやがて世界へと羽ばたいていく、その信念こそが『ローカルファースト』です。そして今、私たちは次なる挑戦としてライブ配信に踏み出します。アメリカに次いで、初めてライブ配信を行うと発表した国が日本です。ワールドベースボールクラシック(WBC)の熱狂をリアルタイムで共有し、これまでにない体験をお届けしていきます」と、日本での10年間とこれからの挑戦について述べた。

 その後、各分野で活躍するクリエイターによるトークパネルが行われた。「実写作品」パートに登壇したのは、『全裸監督』で主演を務めた俳優・クリエイターの山田孝之、監督・脚本を務めた『イクサガミ』の配信が11月に控える映画監督・脚本家の藤井道人、監督・脚本を務めた『今際の国のアリス』シーズン3が9月25日より配信開始となる映画監督・脚本家の佐藤信介、『地面師たち』の監督・脚本を務めた映像ディレクターの大根仁、そしてNetflixコンテンツ部門ディレクターの髙橋信一の5名。

 最初のトークテーマはNetflixの印象について。『地面師たち』で初めてNetflixと仕事をした大根は、「すごく風通しがいい会社だと思った」とその印象を語る。「『地面師たち』は最初は映画でやろうとしたり、テレビドラマでやろうとしたりもしたが、いろんな事情でなかなか企画が通らなかった。だけど、Netflixはほぼその場で結論が出た。『これはNetflix向きの作品だと思うので、ぜひやらせてほしい』と。とはいえ、よく聞くような『一回持ち帰らせていただいて……』とか『アメリカ本国の確認が……』みたいになるかと思ったら、翌週には『ほぼ決定』みたいな返事をいただいて。この風通しの良さやスピード感は、従来のテレビ局や映画会社と全然違うと感じた」。

 続けて、「すぐキャスティングの話にならないんだというのが驚いたところ。今までやってきたテレビドラマや映画は、メジャーになればなるほど『じゃあキャストどうする?』という話になるが、そこじゃなくて、まずは企画内容と脚本を詰めましょうと。キャスティングはその次だと。そこの感覚も、従来の国内メディアと発想が違うんだなと感じた」とキャスティングの話にも言及した。

 日本の作品として世界で最も視聴された作品となった『今際の国のアリス』を手がけた佐藤は、企画を始めたときのことを「日本ではまだNetflixを知らない人が業界でも結構いた。まだすごく手探りのとき」と振り返りつつ、「一つのスローガンとして、日本から世界に向かって発表できる場だというのが中心にあった。どこの国で観ていただいても楽しめるものを作りたいという思いはずっとあったが、日本の芸能界や文化を知らずにわかるかな、という話をしながら脚本づくりをしたのは初めてだった。それがすごく面白かった思い出がある」と当時を回顧。

佐藤信介

 「今までは、『なるべく画面を明るめに、わかりやすくしよう』とプロデューサーから言われることが多かったが、『逆にわかりにくくてもいいからダークトーンにして、ルックを上質にしたい』みたいな。僕らは常々そうしたいと思っていたので、『話しやすい人たちが作品を作り始めたな』ということで、すごくやりやすかったのを覚えています。日本のコンテンツを発表できる場が広がったということと、作品づくりへの意識が変わってくるんじゃないかということを当時思いました」と続けた。

 初期からNetflixで様々な作品を手がけてきた藤井は、「9年前、まだ何者でもない映画青年だったときにチャンスをくださったのがNetflixだった。3rd監督でチャレンジ枠として入らせていただいて、Netflixとともに自分も成長したいと思いながらやってきた9年だった」とこれまでの歩みを振り返る。

 続けて、「自分が一番痛感したのは、DMやメールで海外の記者やクリエイターから連絡がくるんです。そうやって、海外の皆さんに観てもらえる場を作ってくれたことがありがたかった。今までは海外の映画祭に行かないとダメなんじゃないかという固定観念の中で作品を作っていた僕たちに、すごくいいチャンスをくれたのがNetflix。自分にとっては、そんなNetflixとがっつりちゃんと作れたのは『イクサガミ』が初めてになるので、これからも“日本から世界へ”という部分で自分たちが活躍する場を作って、後続の人たちにも『あそこには絶対に面白いものがあるだろう』と思ってくれる場所になったらいいなと思っています」と期待を寄せた。

 俳優として唯一今回のトークパネルに参加した山田は、『全裸監督』のオファーが来た当時のことを振り返り、「日本ではまだNetflixがそこまで浸透していない中で話が来た。ちょうど話が来るまでの1年半くらい、マンツーマンで英語の勉強をしていたんです。それは、日本にいると日本の作品にしか出られないから。『他のところにも出るチャンスを』と思っていたんですけど、『日本の題材で日本で撮影して世界の人に観てもらえるんだったら、そっちのほうが早いじゃん』と。要は、僕が英語の勉強をしたところで、本来の芝居はできない。言語が違うとカルチャーも違うから。今まで学んできたものではないものになるのはわかっていたんですけど、それが日本語で日本の題材で出せるとなると、良くも悪くも今の自分の実力を世界に出せる。そこで自分は本当に求められる人なのかも試せるし、すごく大きなきっかけだと思った」と語った。

山田孝之

 「近い友達に『Netflixでやろうと思う』と話したら、『なんでNetflixなんかでやるの?』みたいな。誰もそこに行かないから」と笑いも交えつつ、「4〜5人くらいの業界関係者の方は『日本のNetflixは業績が悪いから撤退するらしいじゃん』と希望を込めて言っていたんですけど、僕は『だからこそチャンスじゃん』と思って。過去に連ドラをやっていたときも『なんでいきなり深夜ドラマやるの?』と言われたこともあったけど、僕には僕なりのそこでのチャンスがある。それを開くことによって、後輩たちの選択肢がひとつ増えたらいいなという気持ちで挑戦しているので、オファーを受けました」と自身の思いを明かした。

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