『グラスハート』最大の魅力は宮﨑優の存在にあり 熱量で掴んだ“シンデレラストーリー”

『グラスハート』最大の魅力は宮﨑優にあり

 いま日本で、いや、世界のエンターテインメント市場で大注目なのが、ロックバンド・TENBLANKの存在だ

 この記事にたどり着いた方々の中に、TENBLANKを知らぬ者はほとんどいないだろう。7月31日にNetflixシリーズ『グラスハート』の配信がスタートすると、たちまちその存在に魅せられるファンを数多く生み出し、あちこちで話題になっているところだ。中でもとくに注目なのが、ドラマーの西条朱音。演じているのは宮﨑優である。

『グラスハート』キャラクターティーザー予告: 西条朱音(宮﨑優)編 - Netflix

 本作は、若木未生による同名小説をNetflix製作でドラマ化したもの。企画の立案者でもある主演の佐藤健が共同エグゼクティブプロデューサーも担い、実写化に向けてキャスティングやアーティストたちへの楽曲制作依頼を自ら行ったことも話題だ。このドラマが描くのは、ベース&ボーカルの藤谷直季(佐藤健)、ギターの高岡尚(町田啓太)、キーボードの坂本一至(志尊淳)、そしてドラマーの西条朱音(宮﨑優)から成るTENBLANKが音楽の世界でトップへと上り詰めていく道のり。その過程で生まれる人間模様はもちろんのこと、やはり臨場感あふれるライブシーンに胸が熱くなる。

 物語は、朱音が所属するバンドをクビになり、打ちひしがれているところからはじまる。やがて天才的なミュージシャンである藤谷と出会い、彼女の人生はみるみる変わっていく。主人公は藤谷だが、これを朱音のシンデレラストーリー(=成長物語)だと捉えている方は多いことだろう。彼女はTENBLANKでの活動をとおして、ドラマーとしても人間としても大きく強くなっていくのだ。

 『グラスハート』の最大の魅力は、この物語を牽引する宮﨑の存在にこそあると思う。舞い上がったり、落ち込んだり、戸惑ったり、朱音の感情の変化は豊かだ。彼女の心の動きはTENBLANKの一進一退=『グラスハート』の物語の起伏とシンクロしている。朱音の感情の変化に触れることはつまり、TENBLANKという存在の深部に、『グラスハート』という作品世界の核に触れることだともいえるだろう。演じる宮﨑はくるくると表情を変え、声の調子を変え、朱音の感情のうねりを私たちに提示してくる。

 どんな役にもいえることではあるが、朱音を誰が演じるかで、TENBLANKも『グラスハート』もまったく違うものになる。このTENBLANKと『グラスハート』は、“西条朱音=宮﨑優”の存在があってこそなのだ。

 これを「シンデレラストーリー」だと称したが、それは朱音の努力に裏打ちされたものであることを誰もが知っている。宮﨑はオーディションでこの役を勝ち取り、俳優として日本のみならず、世界にその存在を示してみせている。オーディションの結果の有無によって、俳優の人生は大きく変わるものだ。けれどもそこで特別な役割を与えられたからといって、誰もの人生が好転したり上向いていくわけではない。宮﨑は本作に挑むにあたって長い時間、ドラムに打ち込んできたらしい。ドラマー役を演じる者であれば当然のことだろうが、彼女がどれほどの想いと熱量をもって臨んだのかは劇中に収められている。

 オーディションで選考する側に立った佐藤は公式のインタビューで朱音役について「今回の役は知名度や経験よりもとにかく熱量が無いと演じられない役柄だと思っていました。宮﨑さんの魅力、根性と熱意に出会えなければこの作品は走り出せませんでした」と語っている(※)。やはり、宮﨑の存在があってこそのTENBLANKであり『グラスハート』なのだ。

 出演作が多いとはいえない若手俳優のひとりとあって、本作で宮﨑の存在を認識した方は少なくないだろう。彼女は『グラスハート』で高いハードルを越えてみせたが、この好演によってさらに高いハードルを生み出すことにもなった。そのポテンシャルの高さは誰もが実感した。ここから、俳優・宮﨑優の真のストーリーがはじまるのだと思う。

参照
https://realsound.jp/movie/2024/02/post-1584786.html

■配信情報
Netflixシリーズ『グラスハート』
Netflixにて独占配信中
出演:佐藤健、宮﨑優、町田啓太、志尊淳、菅田将暉、唐田えりか、髙石あかり、竹原ピストル、YOU、藤木直人
原作:若木未生『グラスハート』シリーズ(幻冬舎コミックス刊)
監督・撮影:柿本ケンサク
監督:後藤孝太郎
脚本:岡田麿里、阿久津朋子、小坂志宝、川原杏奈
エグゼクティブプロデューサー:岡野真紀子
共同エグゼクティブプロデューサー:佐藤健
プロデューサー:アベゴウ
ラインプロデューサー:櫻井紘史
制作プロダクション:ROBOT
製作:Netflix

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