佐藤寛太、『誘拐の日』で意識した“人間らしい”役作り 現場で感じた江口洋介のカッコよさ

心やさしきマヌケな誘拐犯の新庄政宗(斎藤工)と記憶を失った天才少女の七瀬凛(永尾柚乃)が異色のタッグを結成し、次々と襲いかかる危機を乗りこえながら犯人捜しと逃亡劇を繰り広げるヒューマンミステリー『誘拐の日』(テレビ朝日系)。
本作で佐藤寛太が演じるのは、所轄の若手刑事である北村高広。正義感が強く、真面目で素直な性格だが、上司である須之内(江口洋介)に振り回されることも。
江口洋介との撮影中のエピソードや本作で演じる北村について、佐藤に語ってもらった。
北村高広役で意識した“一目でわからない”キャラクター作り
ーー『誘拐の日』の台本を読んでみていかがでしたか?
佐藤寛太(以下、佐藤):原作があって、すでに一度映像化されている作品だったので、まず「疾走感がすごいな」と思いました。あとは「分厚い」という点ですね。シーンやセリフが多くて、1時間に収めるにはかなりの分量だと思いました。実際に、みんなで台本の読み合わせをしたときに、放送時間と同じくらいでしたし、テンポよく物語が進んでいくだろうなと想像できました。特に第1話は展開がぎゅっと詰まっていて、次から次へと展開が起こるので、これがどう広がっていくのかがすごく楽しみでした。
ーー本作では、髭を生やした姿がワイルドな印象でしたが、性格は従順で素直というギャップに驚きました。
佐藤:あれは監督の意向でした。普段は髭を剃って、衣装合わせに行くんですが、休みが続いていて、剃り忘れてたんです。そのまま行ったら監督が「いいね」と。整っていない無精髭っぽい感じをそのまま生かそうと決まりました。深川(栄洋)監督は「いいものを作るのをやめましょう。変なものを作りましょう」とおっしゃる方なんです。整ったパッケージを目指すのではなく、その場でしか出ない面白さやレア感を大事にする。それが役のビジュアルやセリフの端々にも表れていて、面白いなと思います。
ーーでは、髭を残す判断も台本からではなかったんですね。
佐藤: そうですね。自分でも「ちぐはぐ感」が面白いなと思いました。肌は黒くて髭を生やしているのに、美容パックをする。見た目からすぐに定義できない人物像も魅力的じゃないですか。深川監督が役の解釈を広げてくださいました。
ーー監督の指示で印象的だったことはありましたか?
佐藤:監督が現場での演出に対して独特の演出をされる方で、台本通りに役を作り込むスタイルは合わないと感じました。だから、準備はするけれど決めすぎない、準備をしても手放すことを意識しました。例えば、中華料理を作るつもりで材料や道具を持っていったら、監督からしたらフランス料理を作るつもりだった、みたいな解釈の差異が発生することもあります。そういう時に柔軟に対応できるよう、自分の解釈に固執せず、現場で一緒に正解を見つけていく。その姿勢がすごく大事だと思っています。
ーーなるほど。本作で北村を演じるにあたり、役作りで意識した点を教えてください。
佐藤:これまでも刑事役はよく演じてきましたが、北村は、事件の報告も普段の話し言葉を使うんです。専門用語っぽくならず、肩肘張っていない。物事にがむしゃらに向かうタイプでもない。だからといってだるそうにしているわけでもないので、特別な言葉を強調させないように意識していました。僕の中では北村ってすごく“人間っぽい”人なんです。一緒にいる相手によって、過ごし方や空気感を変えるというか。例えば、須之内さん(江口洋介)と一緒のときは、須之内さんとの時間を優先するし、刑事チームといるときは少し緊張感が緩んで、だらっとしている。そうやって、一目で「この人はこういうキャラクター」とわからないように作っていこうと思いました。
ーーつまり、「警察官」という職業的なイメージよりも、1人の人間としてのキャラクターを強く打ち出しているんですね。ご自身と共感できる部分はありますか?
佐藤:ありますね。僕は今いる人に1番いい顔をしちゃうタイプなんです。例えば友達と食事中に別の予定があっても、目の前の相手を優先してしまう。北村も状況によって態度が変わる部分があって、そういうところは共感します。等身大で人間らしい部分が多いので、無理なく演じられています。監督のおふたりからの演出もすんなり理解できますし、自分が描いている北村像と重なっているので、演じやすいですね。






















