宇野維正の映画興行分析
『鬼滅』と『国宝』の記録的ヒットの陰に隠れて 大健闘していた作品と大コケしてしまった作品

8月第4週の動員ランキングは、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』が週末3日間で動員76万4000人、興収11億5400万円をあげて、6週連続1位。公開から38日間の累計動員は1982万5600人、累計興収は280億8800万円。歴代興収ランキングで『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(2020年公開、407.5億円)、『千と千尋の神隠し』(2001年公開、316.8億円)に次いで第3位となった。ちなみに、ほぼ同期間(公開から39日間)の『鬼滅の刃 無限列車編』の興収は259億1700万円だったので、現時点で今作はそれよりも20億円以上も上回るハイペースで興収を積み上げていることになる。
2位はここにきてさらに前週から順位がアップした『国宝』。週末3日間の動員は34万7000人、興収は5億1100万円と、公開12週目にして数字もほぼ前週からキープという実写映画としては前例のない興行となっている。公開から80日間の累計動員は817万6600人、累計興収は115億2700万円。歴代興収ランキングで『踊る大捜査線 THE MOVIE2レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003年公開、173.5億円)に次いで実写日本映画第2位となった。
さて、6月の第4週に『国宝』がランキング1位になって以降(今から考えると信じられないことだが初週と2週目は1位ではなかった)、『国宝』とその後の『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』の数字があまりにも桁外れなので感覚がバグってしまうが、その間にも『F1/エフワン』(公開から59日間の累計動員120万9700人、累計興収20億4500万円)、『ジュラシック・ワールド/復活の大地』(公開から17日間の累計動員248万4700人、興収38億4500万円)と平常時だったら公開週の主役になる規模のヒット作が実写外国映画にもあったことは書き残しておく必要があるだろう。
特に『F1/エフワン』に関しては非シリーズ作品、Apple Studioの製作と、日本での興行では不安な条件が揃っていただけに、興収20億円突破、さらに先週末から始まったIMAX再上映(一部の映画館では延長も決定した)が連日大いに賑わっているのは大健闘と言える。もっとも、「もし3週後に公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』にスクリーンを根こそぎ奪われなかったら、30億は無理としても25億くらいはいったんじゃないか」とも思ってしまうのだが……。
一方、『国宝』と『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』の規格外の大ヒットの陰に隠れて、歴史的な大コケとなったことが話題にならないだけでなく、そもそも作品の存在自体が広く知られないまま公開期間が終わりつつある作品もある。東映配給で全国拡大公開された『ChaO』は、公開から10日間の動員が2万人、興収が2800万円。昨年公開の『きみの色』や『ふれる。』に続いて、またしてもオリジナルアニメーション作品の興行の難しさを証明してしまった。先週末公開されたギャガ配給の『アズワン/AS ONE』もオープニング3日間の動員が9600人、興収が1500万円と厳しい。この数字、『ChaO』のオープニング成績とほぼ同じ。どんなアニメーション作品でも初週の週末に駆けつける観客が約1万人いるということなのかもしれないが、それだけでは全国拡大公開の興行は成り立たない。
■公開情報
『F1/エフワン』
全国公開中
出演:ブラッド・ピット、ダムソン・イドリス、ケリー・コンドン、ハビエル・バルデム
監督:ジョセフ・コシンスキー
プロデューサー:ジェリー・ブラッカイマー
脚本:アーレン・クルーガー
配給:ワーナー・ブラザース映画
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『今週の映画ランキング』(興行通信社):https://www.kogyotsushin.com/archives/weekend/






















