『初恋DOGs』ナ・イヌの眼差しに滲むソハの愛 “名脇役”野呂佳代の魅力も凝縮された回に

『初恋DOGs』ナ・イヌの眼差しに滲むソハの愛

 3人の出会いも唐突だったが、別れもまた突然で呆気ない。

「もう要らない、もう全部要らない」

 ソハ(ナ・イヌ)がそんな大嘘をついてまで、ヒョンこと快(成田凌)と愛子(清原果耶)のもとを去らなければならなくなった『初恋DOGs』(TBS系)第8話。

 相良(森崎ウィン)と本澤(岸谷五朗)、そして愛犬を動画コンテンツの数字稼ぎの道具として捉える患者がグルになり、快が院長を務めるしろさき動物病院を潰しにかかる。どうやら裏で手を引いているのはウロアグループで、ソハを韓国に連れ戻すために、日本での居候先である快の病院を経営難に陥らせようとしているらしい。

 「俺のせいで」と自分が大切な人たちにとっての大事な居場所まで奪い去ってしまいかねないことに愕然とするソハからは、「もうこれで何度目だろう」「またか」というような心の声が聞こえてきそうだった。そんな彼に、帰国の決意をさせたのは、やっぱり快の覚悟の一言だった。

 「僕が身を引いた方がいいなら」と言いながら病院を相良に売ることも選択肢として持っておくべきだと言い出した快に、敢えて冒頭の強い言葉を発して、別れも告げずに家を出る。後腐れのないように、恩着せがましくならないように、快が負い目を感じないように。

 大切な人の居場所を奪ってしまわないように自身が身を引くことこそが、ソハにとって今ここで見つけた「自分ができること」だったのだろう。決して多くを望んではおらず、むしろ自分の足でしっかりと立ち、些細な日常を慈しみたいというたったそれだけの「ただのソハ」の願いさえも、「ウロアのソハ」の顔が邪魔をし、容赦なく奪い去られてしまう。

 ソハと快のわちゃわちゃとした関係性はいつだって微笑ましい。美味しい卵焼き、ナポリタン、洗濯物……どれもがあまりに2人の些細な日常に染み付いた瞬間で、その一瞬をも大切に取り出して「ありがとう」を列挙する手紙にソハの眼差しが滲む。それぞれ過去に他人に裏切られた経験を持つ者同士がひょんなことから生活を共にし、次第に兄弟のような気兼ねない存在になっていくのは互いにとって本当に尊い経験で、かけがえのないことだっただろう。

 だからこそ、最後にろくにさよならも告げず、敢えて憎まれ口を叩いて自分一人で背負い込んで去っていくしかないソハの、彼らしい優しさや責任の取り方が切なさの尾を引く。

 ただ一方で、皮肉にも進むべき道を決めかねていたソハに大きな決断をさせたのが快のピンチだったというのは、それ以外にきっと考えられない展開で避けられない流れだったとも言える。

 そんな中、しろさき動物病院に訴状が届いたり、悪質な口コミが立て続けに入ったり、予約キャンセルの電話が相次いでも、辛気臭くならない病院内のスタッフのあったかさには救われる思いがした。何より、一番のベテラン動物看護師・杉本みちる役を演じる野呂佳代の気さくで自然体な演技の魅力が改めて光っていた回だった。

 次週は、ソハを追って快と愛子が韓国に向かうようだ。相良が言うところの“バカンス”を終え、モラトリアム期間を卒業したソハはどうやって日本で見つけた大切な存在を守ろうとするのだろうか。日本でのおっとりモードのソハではないまた別の顔が見られそうで楽しだ。

『初恋DOGs』の画像

火曜ドラマ『初恋DOGs』

TBSドラマチームと韓国の制作会社STUDIO DRAGONが初の共同制作を務める、愛犬同士の一目ぼれから始まるラブストーリー。離婚訴訟を専門に手掛ける敏腕弁護士・愛子、獣医・白崎快、韓国からやって来た御曹司ウ・ソハの奇妙な三角関係が描かれる。

■放送情報
火曜ドラマ『初恋DOGs』
TBS系にて、毎週火曜22:00〜22:57放送
出演:清原果耶、成田凌、ナ・イヌ、萩原利久、宮澤エマ、なだぎ武、野呂佳代、永瀬莉子、NOA、円井わん、坂井真紀、深田恭子、岸谷五朗
原案:『DOG한 로맨스』(Studio TooN・LINEマンガ連載中)
脚本:金子ありさ
演出:岡本伸吾、ノ・ヨンソプ、伊東祥宏
プロデューサー:宮﨑真佐子、荒木沙耶、車賢智
協力プロデューサー:キム・ギョレ
共同制作:STUDIO DRAGON
©TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/hatsukoi_DOGs_tbs/
公式X(旧Twitter):@hatsukoi_dogs
公式 Instagram:hatsukoi_dogs
公式TikTok:@hatsukoi_dogs

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