『あんぱん』作詞家として引っ張りだこの嵩 路頭に迷うのぶの“大志”の行方は?

懐中電灯に照らされたのぶ(今田美桜)の手を見て、嵩(北村匠海)の頭に浮かんだ「手のひらをすかしてみれば、真っ赤に流れる僕の血潮」というフレーズ。語りの林田理沙アナウンサーも「おや、この詩……?」と反応していたように、日本人の誰もが知るあの童謡がついに世に出た。
やなせたかし作詞、いずみたく作曲の「手のひらを太陽に」だ。NHK『みんなのうた』にも採用されたことで子供たちに大人気となった同曲は、のちに男性コーラスグループによってNHK紅白歌合戦でも歌われ、国民的ソングとして定着することとなる。

そんな「手のひらを太陽に」が週タイトルとなったNHK連続テレビ小説『あんぱん』第21週が幕を開け、盤石に思えた夫婦の人生に最大の揺らぎが訪れる。
漫画家としてよりも先に作詞家として有名になった嵩は、各方面から引っ張りだこに。ニュースショーの構成や舞台美術など、頼まれると断りきれずに何でも引き受けることから、漫画家仲間の間では「ファイティングやない」と呼ばれるようになった。
世間から見れば、一世を風靡する“成功者”だが、本当にやりたい漫画のほうは低迷。他の仕事の締め切りに追われ、描きかけた漫画は手つかずのまま。何でもそつなく器用にこなせるというのも、案外辛いものだ。だが、どこかで忙しさを言い訳に、世間から認められない漫画を描くことから逃げている部分もあるのかもしれない。そんな嵩に「お前にしか描けないものを描くのは苦しいか。それでも、逃げちゃだめだ」という八木(妻夫木聡)の言葉が鋭く突き刺さる。

一方、八木は雇われ店長から独立し、雑貨屋「九州コットンセンター」を株式会社に成長させた。最初のヒット商品がビーチサンダルであることからも、やはり同社はやはりサンリオの前身である「山梨シルクセンター」がモデルとみられる。そこでガード下の戦災孤児だったアキラ(齊藤友暁)や、嵩が所属していた小倉連隊の宣撫班班長だった粕谷将暉(田中俊介)が働くことに。会社設立のお祝いに駆けつけたのぶと嵩は彼らとの再会を喜ぶ。

さらには、蘭子(河合優実)もフリーランスの物書きとなり、八木から商品の宣伝文を請け負っていた。八木に厳しいダメ出しをされる蘭子が、記者時代ののぶのようだ。かつては職業婦人の先駆けだったのぶも、今や会社のお茶汲み要員。やりがいは得られずとも、嵩を支えるために働き続けていたその会社も上司からの肩たたきでクビとなってしまった。会社が求めるのは、若くて素直でいずれ寿退社する女性社員。入社時にはすでに既婚者だったのぶが長く雇われていたのは、代議士である鉄子(戸田恵子)の紹介だったからなのだろう。
再び路頭に迷うことになったのぶは父・結太郎(加瀬亮)から授けられた帽子を前に「うち何でこうながやろ……」と呟く。幼い頃から「女子も遠慮せんと大志を抱け」という結太郎の言葉を胸に生きてきたのぶ。教師、記者、秘書と職を転々としてきたが、どの仕事にもやりがいを持って向き合ってきた。しかし、のぶの手元には何も残っていない。嵩の収入だけで食べていけるようになった今、唯一あった“内助の功”としての役目も薄れつつある。
そんな折、のぶが自宅に帰ると嵩は「手のひらを太陽に」の人気歌手・白鳥玉恵(久保史緒里)とコンサートの構成について楽しげに打ち合わせしていた。仕事のパートナーとして渡り合える玉恵は、今ののぶにとっては胸がざわつく存在なのではないだろうか。戦後20年が経ち、人々が夢に向かってまっすぐ突き進む中、嵩とのぶは進むべき道がわからず立ち往生している。
■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、高橋文哉、眞栄田郷敦、大森元貴、戸田菜穂、戸田恵子、浅田美代子、吉田鋼太郎、妻夫木聡、阿部サダヲ、松嶋菜々子ほか
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK






















