渡哲也はまぎれもなくテレビドラマのスターだった 『生命燃ゆ』に刻まれた魂の名演

渡哲也は“テレビドラマ”のスターだった

 さて、今回ホームドラマチャンネルで放送される『生命燃ゆ』は、「我が人生に悔いなし」というサブタイトルから話のネタが割れてしまうのだが、自分が取り組んだ事業に打ち込み、生命を燃やしてプロジェクトを成功させて世を去る、ある一介の企業社員の物語である。原作は『燃ゆるとき』や、『金融腐蝕列島』など映像化作品を多く執筆している作家・高杉良の同名小説。大分にある化学工場で従業員の人員整理が計画されるなか、東京本社から出向していた室長が社員の解雇を避けながら工場を立て直すという、熱いドラマが展開される。

『生命燃ゆ 妻よ娘よ、我が人生に悔いなし』©石原音楽出版社

 渡は、東京に妻と2人の娘を置いて大分に単身赴任中の柿崎を演じており、人員整理に反対のストライキを起こす工場スタッフと、東京本社の社長ほか責任者たちとの狭間に立ちながら、従業員を辞めさせずに済むよう大分工場を日本一の化学プラントにすべく心血を注ぐ。働き過ぎが祟って病院で検査を受けたことから、彼は急性白血病であることが判明する。十朱幸代が扮する柿崎の妻は、夫や娘、柿崎の友人らに事実を伏せて明るく振るまうが……。病気で徐々に弱っていきながらも、部下と家族に優しい言葉をかける渡の熱い演技が見どころである。

 渡哲也は日活が傾きかけていた1960年代後半の遅いデビューであったため、日活全盛期の宍戸錠や赤木圭一郎、二谷英明のような“映画スター”ほどにはならなかったが、テレビに進出して多くの視聴者に愛されたことで有名になった俳優とも言える。特に石原プロに所属してからの活躍は目覚ましい。1970年代から1990年代の渡は、まさにテレビドラマ界を牽引するスターであった。宝酒造の日本酒「松竹梅」のコマーシャルも多くの人から親しまれ、刑事ドラマの硬派な印象だけではない、寡黙で味わい深い俳優になっていった。

『西部警察 PART-III』©石原音楽出版社

 ちなみに日活出身の石原裕次郎は『太陽にほえろ!』で、二谷英明は『特捜最前線』で、渡哲也は『大都会』+『西部警察』で刑事ドラマのボス役を演じて、いずれも長寿番組に育ったのは面白い巡り合わせだ。『西部警察 PART-III』で渡が演じる大門が壮絶な殉職をする最終回スペシャルは、1984年の放送当時に25%もの高視聴率を記録し、ラストシーンは木暮役の石原裕次郎が迫真の男泣きを見せる。こちらもホームドラマチャンネルで9月27日に放送されるのでお見逃しなく。

■放送情報
「没後5年 渡哲也特集」
CSホームドラマチャンネルにて放送

『生命燃ゆ 妻よ娘よ、我が人生に悔いなし』
8月10日(日)20:30~放送
出演:渡哲也、十朱幸代、前田吟、中村嘉葎雄、神田正輝、寺尾聰、野川由美子、星遙子、天田俊明、入江正徳、谷川竜、深江卓次、山根久幸 
原作:高杉良
脚本:塙五郎
監督:澤田幸弘
©石原音楽出版社

『大都会-闘いの日々-』
8月28日(木)よりアンコール放送スタート
※『大都会 PARTII』は毎週土曜18:30~放送

『西部警察 PART-III』
毎週土曜19:30~放送 9月27日(土)最終回
※『西部警察』は毎週土曜24:30~ 4話連続 / 平日6:00~ 放送

【石原プロモーション制作ドラマ総力特集】特設ページ:https://www.homedrama-ch.com/special/ishiharapro

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる