『初恋DOGs』を韓ドラファンが分析　清原果耶と成田凌の“ティキタカ”が今後の鍵か

　SNSでは、ナ・イヌ扮する財閥の末息子ソハに注目する声が散見されている。将軍ことロッキーの実の飼い主だった祖母の遺言を託され、巨額の価値を持つロッキーを韓国へ連れ帰ろうと訪日したソハは、2024年にブームを巻き起こした『Eye Love You』（TBS系）のテオ（チェ・ジョンヒョプ）のように、率直で韓国ドラマの王道キャラの系譜に連なる安定感がある。

　ソハは実は愛子にほのかな思いを寄せているが、出会った当初より「一緒にご飯を食べたのだから“チング”（友達）だ」と穏やかに笑い、ひとまずは彼女の“初恋”を応援するポジションとして一線を引く。昨今の韓国ドラマで人気があるのが、こうして女性主人公をアシストする男性キャラなのだ。ナ・イヌの出世作となった『私の夫と結婚して』はもちろん、『オク氏夫人伝』の理不尽な身分制度に抗うタフなテヨンを支える芸人ソイン／スンフィ、『おつかれさま』で聡明なエスンをひたむきに愛するグァンシクと同じく、時として異性愛にまとわりつく権力勾配を感じさせないフェアな男性である。

　将軍の連れ戻しを拒んだソハは父親から見放されて無一文になり、快の家に転がり込む。他者を遠ざけて生きてきた快が、それをものともしないソハから影響を受けて軽口を叩いたり、毒を吐いたりするなど人間味を増してからの方が魅力にあふれている。愛子もまた、財閥一族で期待されず育った孤独を吐露するソハに共鳴し、同志のように寂しさをすくい取ってくれる存在となる。むしろ愛子にこうした優しい一面があったことが新鮮な発見で、ソハこそ彼女のチャームポイントを引き出してくれていることが分かる。こうしてソハが二人の性格の変化を見せてくれることも、視聴者が主人公たちを深く理解する過程の一つなのだ（※）。彼に感情移入し、応援したくなるファンが多いのも納得だろう。

　快の大学の同級生・相楽（森崎ウィン）と優香（深田恭子）、快の過去の確執や、不仲だった両親に対する愛子の不信感など、二人が自己をこじらせてしまうまでには、それぞれ暗い経験がある。しかし、どんな挫折や鬱屈も、言葉や単純な場面だけで簡潔に説明できるほど簡単なわけではない。相楽との確執は現在の快の“人に対して踏み込めない”という性格を形作る決定的な出来事だったにもかかわらず、セリフで説明するなどやや拙速な印象を受けた。心を奪う主人公を作るには、人物のビハインドストーリーや行動の動機を突き詰め、彼らが直面するジレンマを深く掘り下げなければならない（※）。主人公の重要なエピソードの見せ方が弱いことで葛藤のレイヤーが見えてこず、感情移入を誘えていないのだ。

　とはいえ特に最新話で、相楽、優香、快の三角関係を明らかにした雪の日のエピソードは、韓国ドラマファンにも響く極上の演出だった。韓国人は雪、特に初雪に対する思い入れが強く、「初雪の日にデートをする」「初雪を一緒に見たカップルはずっと一緒にいられる」「初雪の日に初恋の人に会える」など、とにかくロマンチックなジンクスを信じている。そのためこの日に好きな人と約束をしたり、プロポーズをしかけるといったことがあり、韓国映画やドラマでも幾度となく雪と恋愛を結びつけるシーンが作られた。

　一方、『初恋DOGs』は、ロマンチックなはずの雪の日を快の悲しいターニングポイントとして描くことで、韓国ドラマとはまた異なるアプローチを見せてくれた。韓国ドラマも、スタート時よりも尻上がりに調子を上げていった終盤に面白味がある傑作が多い。本作も十分期待できそうである。

参考
※ パク・ソンス『韓国式ストーリーのつくりかた』（2025年6月6日、日経BP）

■放送情報
火曜ドラマ『初恋DOGs』
TBS系にて、毎週火曜22:00〜22:57放送
出演：清原果耶、成田凌、ナ・イヌ、萩原利久、宮澤エマ、なだぎ武、野呂佳代、永瀬莉子、NOA、円井わん、坂井真紀、深田恭子、岸谷五朗
原案：『DOG한 로맨스』（Studio TooN・LINEマンガ連載中）
脚本：金子ありさ
演出：岡本伸吾、ノ・ヨンソプ、伊東祥宏
プロデューサー：宮﨑真佐子、荒木沙耶、車賢智
協力プロデューサー：キム・ギョレ
共同制作：STUDIO DRAGON
©TBS
公式サイト：https://www.tbs.co.jp/hatsukoi_DOGs_tbs/
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