妻夫木聡、戸田恵子、津田健次郎ら“メンター”大集結 『あんぱん』は異例の朝ドラに

残り2カ月となったNHK連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『あんぱん』だが、物語は戦後に入り、少しずつ復興へと向かっていく日本の姿とヒロインの姿が重ね合わされている。
本作は、『アンパンマン』の作者として知られるやなせたかしとその妻・小松暢をモデルとした、柳井嵩(北村匠海)とのぶ(今田美桜)の物語。
第12週で終戦が描かれた本作は、第13週から戦後編に突入する。「意外とシームレスに戦後編に入ったな」というのが初見の印象だった。
子供たちに軍国教育を行った責任を取るために教師を辞めたのぶは、亡き夫・若松次郎(中島歩)が残した本で身につけた速記の技術が認められ、高知新報で働くことになる。

取材で向かった闇市でのぶが直面するのは、戦災孤児たちの姿。その爪痕が残っているという意味において「戦争はまだ終わってない」と視聴者は思い知らされる。
朝ドラでは戦前・戦中・戦後が繰り返し描かれてきたが、1945年に戦争が終わったからといって、すぐに時代が切り替わり、明るい戦後が始まったわけではない。戦争が終わった1945年から1952年にかけてのGHQ占領下の日本は、まだまだ混乱状態にあり、1952年のサンフランシスコ平和条約と日米安全保障条約の発効がなければ、今とは全く違う戦後に向かっていたのかもしれない。
『あんぱん』が描く戦後直後の描写には、戦争に負け、明日どうなるのかわからなかった混沌した日本の状況が刻印されている。それはヒロインののぶに対しても言えることだろう。

「愛国の鑑」として戦前日本の空気に加担したのぶだが、戦争に負けてこれまで自分が信じてきた正義が逆転した状況に対して、深く思い悩んでいるようにはあまり見えない。当初はその葛藤が見えないことに違和感を抱いたのだが、やがて戦後編が進むにつれて、当時の日本人は日々を生きるのに精一杯で、過去を振り返るような余裕はまだなかったのだと感じるようになっていった。
記者となったのぶは、かつて自分が教えていた子供たちと年齢が変わらない戦災孤児たちと向き合い、彼らのことを記事にしようとする。おそらくどんな状況でも、まずは自分にできることをしっかりやろうというのが彼女の生き方なのだろう。だからこそ新聞社に入ってすぐに実力を発揮し、記者として成長することができた。




















