『鬼滅の刃』宇髄天元が無限城にいれば戦局は変わったのか　“参戦IF”のリアルな結論

　『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』が公開からわずか10日で興行収入128億円を突破し、観客動員も910万人を超える驚異的ヒットを記録している。シリーズは再び社会現象となり、注目は高まる一方だ。そんな中、一部のファンの間では鬼殺隊の元音柱・宇髄天元の存在にスポットが当たっているようだ。

※本記事では、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』第一章および第二章以降のネタバレも含みます。原作未読の方はご注意ください。

　忍として培った隠密行動能力と毒への耐性、音の呼吸による爆発を生む斬撃――宇髄の戦闘能力が柱の中でも群を抜いていたことは、「遊郭編」で証明済みだ。さらには、敵の攻撃動作の律動を読み音に変換することで癖や死角がわかる「譜面」という能力も持っている。

　柱の中でも上位の実力者だと思われた宇髄だが、「遊郭編」において上弦の陸・妓夫太郎との戦いで左腕と左目を失い、引退を決意。「無限城編」では戦いには加わらず、鬼殺隊の最高責任者である“お館様”こと産屋敷耀哉の警護についている姿が描かれていた。

　ネット上では、一部ファンが「もし宇髄が無限城にいれば戦局が変わっていたのか」という議論を交わしている。しかし、結論から言えば、宇髄が一線を退く選択をしたのは「正解」だったと言えるだろう。

　仕込んだ爆薬と巨大な2本の剣を使い、「爆発音と斬撃音」を繰り出し鬼を攻撃するのが宇髄の戦闘スタイルだ。しかし、片腕を失ったことで、その剣技は大きく損なわれ、「譜面」を完成させるための時間も大幅に延びてしまうだろう。

　たとえば、上弦の参・猗窩座戦。主人公・竈門炭治郎と水柱・冨岡義勇が死力を尽くしてようやく勝利を得た戦いに、もし宇髄が加わっていたらどうなっていただろうか。音の呼吸による爆発的な斬撃は確かに強力だが、現状の制御力では味方まで巻き込む危険がある。むしろ宇髄の不完全な動きが戦況を混乱させ、炭治郎たちの集中を妨げていたかもしれない。

　上弦の弐・童磨戦でも同様だ。確かに爆発の衝撃で冷気を吹き飛ばすという戦術も考えられるが、童磨は毒が効かないうえに頸の強度も圧倒的。片腕の宇髄では斬り伏せるのは難しく、蟲柱・胡蝶しのぶ生存の道筋があったとは思えない。むしろ、宇髄の参戦で童磨の警戒が強まり、しのぶの捨て身の毒作戦が破綻していた可能性も……。

　以下、『第二章』で触れられるであろうエピソードのネタバレになってしまうが、上弦の壱・黒死牟戦においても霞柱・時透無一郎、岩柱・悲鳴嶼行冥、風柱・不死川実弥という鬼殺隊最強格が痣を発現させ、赫刀を振るってもなお多くの犠牲を出したこの戦いにおいても、譜面を完成させる前に討たれていただろう。

　見せ場があったとすれば、無限城を血鬼術で自在に操る上弦の肆・鳴女との戦いだろうか。琵琶をかき鳴らすこの敵との“音対決”に宇髄が勝てば、柱たちが格段に戦いやすくなり、負傷を抑えられていたという展開は考えられそうだ。

　では、“ラスボス”鬼舞辻無惨戦ならどうか。無惨の猛毒と超高速再生を前にすれば、一撃でも受ければ命取り。味方の連携を崩すリスクを考慮すれば、宇髄が加わる余地は極めて限定的だ。それでも無惨をギリギリまで追い詰めたものの、全ての鬼殺隊士が虫の息となり動けなくなった“あの瞬間”に宇随が現れたなら、柱たちの回復時間を稼ぐことくらいはできたのかもしれない。

　本作では登場シーンがほとんどなかった宇髄だが、そのド派手な活躍が観たかったと未練を持つファンからは、「一般隊士でも無限城に“ご招待”されてるのに、宇髄さんだけスルーされるのは納得いかない」「宇髄さんは作中で『型』を3つしか見せていない。残り2つの型がどんな技だったか、それ次第で戦況は変わったかも」といったコメントが聞かれる。一方で、惜しむ気持ちと同時に、「宇髄さんの“強さ”とは、滅することではなく“生”を選んだことだと思う」「自己犠牲で散っていく者が多い中、嫁たちのために“生きる”選択をした。あれこそ本当の強さだ」「引退は逃げではなく、後方支援や若手隊士の育成といった“戦いを支える”役割を担うという、新たな戦場に立っただけ」など、宇髄の選択に理解を示す声も多い。

　ともあれ、こうした物語の余白を読み取ることでも楽しめるのが『鬼滅の刃』の奥深さ。動員数が伸びていくたびに、ファンの“IF”トークも過熱していきそうだ。

■公開情報
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』
全国公開中
キャスト：花江夏樹（竈門炭治郎役）、鬼頭明里（竈門禰󠄀豆子役）、下野紘（我妻善逸役）、松岡禎丞（嘴平伊之助役）、上田麗奈（栗花落カナヲ役）、岡本信彦（不死川玄弥役）、櫻井孝宏（冨岡義勇役）、小西克幸（宇髄天元役）、河西健吾（時透無一郎役）、早見沙織（胡蝶しのぶ役）、花澤香菜（甘露寺蜜璃役）、鈴村健一（伊黒小芭内役）、関智一（不死川実弥役）、杉田智和（悲鳴嶼行冥役）、石田彰（猗窩座役）
原作：吾峠呼世晴（集英社ジャンプ コミックス刊）
監督：外崎春雄
キャラクターデザイン・総作画監督：松島晃
脚本制作：ufotable
サブキャラクターデザイン：佐藤美幸、梶山庸子、菊池美花
プロップデザイン：小山将治
美術監督：矢中勝、樺澤侑里
美術監修：衛藤功二
撮影監督：寺尾優一
3D監督：西脇一樹
色彩設計：大前祐子
編集：神野学
音楽：梶浦由記、椎名豪
主題歌：Aimer「太陽が昇らない世界」（SACRA MUSIC / Sony Music Labels Inc.）・LiSA「残酷な夜に輝け」 （SACRA MUSIC / Sony Music Labels Inc.）
総監督：近藤光
アニメーション制作：ufotable
配給：東宝・アニプレックス
©︎吾峠呼世晴／集英社・アニプレックス・ufotable
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