『明日はもっと、いい日になる』が描く児童相談所のリアル “正義感”が引き起こす弊害も

 7月7日は七夕の日。多くの子どもたちが短冊に願いを込める。未来は誰にもわからないけれど、すべての子どもたちが『明日はもっと、いい日になる』(フジテレビ系)と信じられるように奔走する人たちのドラマが始まった。

 神奈川県警警察署強行犯係の刑事から突如、海辺の児童相談所(以下、児相)へ出向させられた翼(福原遥)。子どもの頃から刑事になるのが夢で、いずれは捜査一課で働くことを目指していたため、気乗りしない状態で出勤初日を迎える。

 そんな翼の教育係になったのが、児童福祉司の蔵田(林遣都)だ。「あなた、もしやいい人ですか?」という蔵田の意味不明な質問に翼が面を食らっていると、児相に“泣き声通報”が入る。

 “泣き声通報”とは、子どもの泣き声で泣き声で、虐待を心配した近隣住民から入る通報のこと。児相は通報から原則48時間以内に、子どもの安全確認を行わなければならない。泣いていたのは小学生の男児・拓斗(土屋陽翔)で、内ももにアザがあった。

 翼はすぐに母・加奈(徳田えり)からの虐待を疑うが、蔵田に「児相の仕事は親の罪を暴くことじゃない」とたしなめられる。それでも納得がいかない様子の翼を、「正義感の扱い方も知らない人を現場に連れていくのは危ないので」と突き放す蔵田。それは翼が一番言われたくないことだった。

 翼が出向を命じられたのは、痴漢から女子高生を守ったことで、あと一歩のところまで追い詰めた強盗犯を取り逃がしたからだ。目の前に困っている人がいたら、いてもたってもいられず、助けに向かう。その正義感に救われる人もいるが、一方的に悪と決めつけられた人にとっては恐怖にもなり得るのかもしれない。

 児相に併設された一時保護所の課長兼保育士で、子どもたちから“じょーさん”として慕われる南野(柳葉敏郎)は自分たち職員を「招かれざる客」と表現する。実際、子どもの命が虐待によって失われる痛ましい事件は日々起きており、虐待が疑われる場面に遭遇したら、すぐに通報するのは大事なこと。児相が安全確認をし、何もなければそれでいい。だが、親の立場だったら? ある日突然チャイムが鳴り、玄関に出たら児相の職員がいる。もし後ろめたいことがなかったとしても、心臓が縮み上がるのではないだろうか。

 自分の育児が間違っているんじゃないかと不安に襲われ、子どもと引き離されるかもしれないと恐怖する。児相の職員を殴ったり、塩を撒いたりすることを肯定するわけではないが、それもある種の防衛反応なのだろう。だからなのか、次から次へと相談が押し寄せてくる目まぐるしい職場にもかかわらず、誰一人としてピリピリしていない。翼が初日から弱音を吐いても深刻にならず、笑い飛ばしてくれる人ばかりで安心感がある。

 「スーツではなく、もっとカジュアルな服装で」という蔵田の指摘も、クライアントに威圧感を与えないためなのだろう。

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