『未知のソウル』は全ての現代人に向けた人間讃歌だ 共感の軸になった“不器用”さと愛

 パク・ボヨンが双子のミレとミジを演じ、多くの人の心を揺さぶった『未知のソウル』の最終話が配信された。優等生で冷静沈着なミレとスポーツ万能で元気が取り柄のミジ。一卵性双生児だが、性格が全く違う2人を巧みに演じ分けたパク・ボヨンの演技に毎週釘付けになった。

 2人の高校の同級生で弁護士のイ・ホス(パク・ジニョン)と資産運用会社のCIOからドゥソン里でイチゴ農園の主となったハン・セジン(リュ・ギョンス)がからみ、ソウルとドゥソン里を舞台に物語が繰り広げられた本作。若者4人と彼らを取り巻く大人たちの人生模様を丁寧に描いた物語は、なぜ多くの人の心を捉えたのだろうか?

※以下、『未知のソウル』のネタバレを含みます。

パク・ボヨンがパク・ジニョン&リュ・ギョンスと見事なケミを醸し出す

 この作品を魅力的に輝かせた功労者はパク・ボヨンで間違いないだろう。性格が違うミジとミレの演じ分けだけでなく、2人が入れ替わったシーンを考えれば1人で4役を演じたわけだ。

 ミレは冷静沈着、ミジは比較的感情を表に出す性格なので、2人は「静と動」といえる。何かに怒りを覚えた場合、ミレは自分の感情を押し殺しながら理路整然と相手に訴える。一方でミジは感情を爆発させて相手に詰め寄っていく。こうした感情の出し方をパク・ボヨンは巧みに演じ分けた。

 しかも2人が入れ替わり「ミジらしさを出しつつも知的で冷静な部分が出てしまう」ミレと「ミレらしく振る舞いながらも明るく積極的な部分が出てしまう」ミジを完璧に演じるのだからパク・ボヨンはすごい。

 その演じ分けが、ホスを演じるパク・ジニョンとセジンを演じるリュ・ギョンスと見事なケミストリーを醸し出した。幼い頃の大事故で障害を持ったホスと、最愛の祖父の最後のSOSに応えられず心に傷を負ったセジン。高校時代から惹かれ合っていたホスとミジが自分の気持ちに素直になっていく姿、そして他人に興味がないミレが、飄々としながらも核心を突いてくるセジンに心を許していく様子がなんともいえずキュンとなる。この組み合わせだからこそ、ときに甘酸っぱく、ときに胸が締め付けられるようなシーンが引き立ったのだと思う。

オッキとブノン 2人の“オモニ”が描く愛とは?

 主要キャスト以外も多くの見せ場を作ってくれたドラマだった。特にミジとミレの母親・オッキ(チャン・ヨンナム)とホスの母親・ブノン(キム・ソニョン)がいなければ、このドラマの魅力は半減しただろう。

 当初はミジに冷たく当たるオッキにイライラし、息子を自慢するブノンが良い人なのか悪い人なのかわからなかった。この2人が高校の同級生で、現在は職場の上司と部下という関係性であるため「ミジとホスの仲を裂くのかな……」と思ったりした。

 しかし、そんな単純なドラマではなかった。オッキもブノンもそれぞれ家族愛に恵まれず、一人で懸命に生きてきた女性だったのだ。

 オッキがとりわけミジに対して冷たい態度を取ったのは、どのように愛情表現をしていいかわからなかったからだ。オッキの母親は、ミジが「大好き」と言ってはばからない祖母。シングルマザーとしてオッキを育てた祖母は、オッキに対して厳しく接してきたため、オッキは愛情に飢えていた。オッキが実母に対して見せる冷たさは、複雑な感情があったからなのだろう。しかし、オッキを必死に守ってきた祖母の姿が明らかになり、それを知ったオッキは号泣する。

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