そんなどこか切ない旅路を、ダニー・ボイル監督は得意のユーモアと美しい映像で描いていく。ここで観客は1作目の『28日後...』を思い出すことになるだろう。『28日後...』は終末パニック映画であるが、同時にポップでユーモラスなロードムービーでもあった。小さな車に荷物を詰め込み、スーパーマーケットで手あたり次第に物を取って、シートを広げてみんなでご飯を食べる……。そんなピクニック感が『28日後...』の大きな個性だった。本作ではそのノリが見事に復活。一見すると終末観ゼロの美しい自然に、悲惨な状況下でも発生する笑い、そして昼間にシートを広げてリンゴをかじる。なんとも微笑ましい。後半から登場するレイフ・ファインズも、見た目は狂人、中身はマトモという、非常に絶妙なバランスだ。登場した瞬間は『教皇選挙』（2024年）と同じ人とは思えないが、話が進むにつれて「同じ人だ！」と思えてきて……さすがの演技力としか言いようがない。

　たくさん殺して、少し泣いて。少年の成長譚として、本作はしっかり完成している。しかし……！　だからこそ、最後10分の偏差値フリーフォールの衝撃は凄まじい。本気で別の映画が始まったのかと思うほどだ。聞けば本作は3部作予定らしい。恐らく次回は青春映画になるのだろう。ひとまず興行的には好調な滑り出しのようであるし、この衝撃のエンディングの続きを楽しみにしたい。是非とも最後まで駆け抜けてほしいものである。素直に、頑張ってください！

■公開情報
『28年後...』
全国公開中
出演：ジョディ・カマー、アーロン・テイラー＝ジョンソン、ジャック・オコンネル、アルフィー・ウィリアムズ、レイフ・ファインズ
監督・プロデューサー：ダニー・ボイル
脚本・プロデューサー：アレックス・ガーランド
エグゼクティブ・プロデューサー：キリアン・マーフィー
配給：ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト：https://www.28years-later.jp/
公式X（旧Twitter）：https://x.com/28YearsLaterJP