“『めおと日和』ロス”を埋める芳根京子の出演作5選 『表参道高校合唱部!』『累』など

『累 -かさね-』

『累 -かさね-』©︎2018映画「累」製作委員会 ©︎松浦だるま/講談社

 2018年公開の映画『累 -かさね-』では、土屋太鳳とダブル主演を務め、顔を入れ替える魔法の口紅によって運命が変わる少女・累を演じた。劣等感と嫉妬に苛まれる累。芳根は、内気で卑屈な彼女と、他人の美貌を得た“輝く女優”としての累を見事に演じ分けた。スクリーンの中で、欲望に取り憑かれた目の光、舞台上で輝く狂気のオーラは圧巻の一言。これぞ芳根の演技の真骨頂とも言える名演だったように思う。本作で芳根は第42回日本アカデミー賞・新人俳優賞を獲得。彼女の“怪演”の才能が開花した作品といえる。

『ファーストラヴ』

映画『ファーストラヴ』予告編【2021年2月11日(木祝)公開】

 2021年公開の映画『ファーストラヴ』では、父親殺しの容疑者・聖山環菜を演じた。アナウンサー志望の女子大生が、なぜ父を刺したのか。その動機を探る心理サスペンスだ。公認心理師である主人公・由紀(北川景子)との面会シーンでは、芳根の演技が極限まで研ぎ澄まされる。冷淡な無表情、唐突に見せる笑み、爆発する怒り。すべてが「本当にそこにいる人間」のようだった。『波うららかに、めおと日和』のなつ美のような癒しを演じた人間と、同じ人物がこの怪演を成し遂げているという事実に、今振り返ると驚かされる。

北川景子×芳根京子、久々の共演で関係性が変化!? 『ファーストラヴ』で感じた芝居の楽しさ

直木賞を受賞した島本理生のベストセラー小説を堤幸彦監督によって映画化した『ファーストラヴ』が2月11日より公開されている。  …

『Re:リベンジ-欲望の果てに-』

4月期木曜劇場『Re:リベンジ-欲望の果てに-』主演・赤楚衛二×共演・錦戸亮 3話予告

 2024年放送のドラマ『Re:リベンジ-欲望の果てに-』(フジテレビ系)は、医療機関を舞台にしたリベンジサスペンス。芳根は心臓病の妹を失い、真相を追う看護師・朝比奈陽月を演じた。優しさと怒り、愛情と復讐。その狭間で揺れる陽月の内面を、彼女は現代的な感性と表現で丁寧に描いた。最も昭和的な妻であるなつ美とはまるで対極だが、どちらも芳根の演技には没入感がある。ソフトな印象の中に見える芯の強さ、そして時折のぞく脆さにこそ、芳根の現在地がぎゅっと詰まっていた。役に寄り添いながらも、感情の輪郭を明瞭に描き出すその演技には、一貫した誠実さがある。

芳根京子、11年ぶりの木曜劇場出演に喜び 「ヒロインでこの枠に出ることになるなんて」

赤楚衛二主演のフジテレビ木曜劇場『Re:リベンジ-欲望の果てに-』が、4月11日より放送中だ。本作は、巨大病院で巻き起こる権力争…

 “『波うららかに、めおと日和』ロス”に沈む今こそ、俳優・芳根京子という存在の奥深さに目を向けてみてほしい。なつ美というキャラクターは、彼女が演じてきた役の中の一つにすぎない。それでも、なつ美を通して感じた温かさや揺らぎは、彼女の演技の中に確かに息づいているのだ。それは『表参道高校合唱部!』で見せた眩しさにも、『ファーストラヴ』で垣間見せた痛みや狂気にも通じている。次に観る芳根京子は、どんな表情であなたの心を動かすのだろうか。

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