『あんぱん』中島歩の魅力が凝縮された大人の男 次郎はのぶと視聴者の“心の支え”だった
戦争が激化してからも、次郎のスタンスは変わらない。次郎と共に生きることで、のぶは新しい夢を見れるようになった。一方で、船乗りである次郎と高知で教師として働くのぶでは見えているものが違いすぎた。次郎が日本の戦況の厳しさを目の当たりにする中、のぶは日本の勝利を信じて疑っていない。並んで未来を見ていた2人の価値観がすれ違ってしまう。次郎は激昂するのぶを優しく抱き止めるが、のぶは次郎の身を案じるような言葉をかけられなかった。一方で、日本が戦争に負けるかもしれないという次郎の言葉は、のぶの考えに変化を与え、次郎の言葉があったからこそ嵩に「生きてもんてき!」と叫ぶことができた。皮肉なことだが次郎と価値観をぶつけたことが、のぶが“愛国の鑑”を翻すきっかけとなったのだ。
次郎はどんなときものぶに変化を与え、彼女が取り乱したときでさえ横に並び未来を見ようとしてくれた。結太郎が子どもののぶに夢を見ることを教えた人物であるならば、次郎は大人ののぶが夢を見られるように導いてくれた人物と言えるだろう。
第61話の最後の電報に書かれていた「キトク」の文字。のぶと次郎の別れが近づいている。次郎がのぶに与えたものは、のぶの未来にどのように作用していくのか。次郎と共に見た夢に向かって、力強く走るのぶの姿に期待したい。
■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、加瀬亮、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、細田佳央太、高橋文哉、中沢元紀、大森元貴、二宮和也、戸田菜穂、浅田美代子、吉田鋼太郎、竹野内豊、妻夫木聡、阿部サダヲ、松嶋菜々子
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK