大塚剛央、土屋神葉、梅田修一朗らが示した“声の力” 2025年春アニメで活躍した男性声優たち

梅田修一朗

 今期、まっすぐな優しさを声に乗せて、物語に深みをもたらしたのが梅田修一朗だ。『ヴィジランテ -僕のヒーローアカデミア ILLEGALS-』で演じた灰廻航一は、正規のヒーローではなく、影から人々を守ろうとする“ヴィジランテ”。強さに自信を持てないまま、傷つきながらも誰かのために動こうとする姿を、梅田は言葉の間合いや息づかいに繊細な揺らぎを込めて描き出している。「人間は自分が見上げてるものに憧れる」「今更プロになんかなれっこない」など、思わず胸に刺さるセリフも多く、不安や戸惑いを抱えながら踏み出すその言葉には、等身大のリアリティが息づいていた。

 同クールの『小市民シリーズ』第2期では、冷静で理性的な小鳩常悟朗を演じ、抑えたトーンの中にも人間味をにじませる芝居で、キャラクターの輪郭を静かに浮かび上がらせた。これまでも『ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜』の天道輝や、『負けヒロインが多すぎる!』の温水和彦、『先輩はおとこのこ』の花岡まことなど、どこか不器用で、迷いを抱えたキャラクターと向き合ってきた梅田。その演技は、そうした人物たちの“弱さ”を描くと同時に、彼らの中に確かに存在する強さや誠実さをすくい取ってきた。

梅田修一朗×関根明良×内田雄馬、『映画 先輩はおとこのこ』を経て考える“自分らしさ”

2024年に放送されたテレビアニメ『先輩はおとこのこ』の待望の続編が、『映画 先輩はおとこのこ あめのち晴れ』(以下、『映画 先…

 7月以降も『光が死んだ夏』のヒカルや、『渡くんの××が崩壊寸前』の渡直人など、メインキャラクターの出演が控える梅田。これまで丁寧に積み重ねてきた芝居が、新たな役の中で“弱さの奥にある優しさ”として、また違ったかたちで息づいていくのだろう。視聴者の不安や弱さにも、そっと寄り添ってくれるような――そんな声を、またきっと聞かせてくれるに違いない。

 2025年春クール、アニメという枠の中で、“声の力”をあらためて印象づけてくれた3人の声優たち。彼らの演技は、キャラクターがどのように生き、どんな思いを抱えているのかを鮮やかに刻みつけてくれた。その確かな歩みを想像させる声に、この先も思わず耳を澄ませたくなるのだろう。

薬屋のひとりごと

中華風の後宮を舞台に、毒見役の少女・猫猫(マオマオ)が持ち前の知識と観察眼で難事件を解決していくミステリー。医薬の知識を武器に、陰謀渦巻く宮廷で真実を見抜いていく模様が描かれる。

『薬屋のひとりごと』第2期第2クール

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