『あんぱん』はなぜ“戦争”を丹念に描くのか 制作統括が込めた“変わらない正義”への問い

 先日、映像編集を終えたという倉崎は「戦争パートでは嵩が空腹を経験することも大事ですが、やはり『アンパンマン』自体のテーマである『逆転しない正義とは何か』というところにつながっていく。戦地に行った嵩と、軍国主義の崩壊を経験したのぶ、それぞれにとっての正義が変わってしまう瞬間を描くことで、本当に変わらない正義とは何かを自問自答していくんです。その答えの最たるものが『アンパンマン』だと思いますが、そこは『あんぱん』を制作するにあたって絶対に描かなければいけないことでした」と力を込める。

「今感じているのは、戦争としっかり向き合ってよかったということ。戦争パートで出会う八木信之介役の妻夫木聡さんも凄まじいお芝居をしてくださっていて、『これが「あんぱん」なのか』『別のドラマじゃないのか』と思うほど、まるで映画のようになっています」

 そんな戦争シーンを支えているのが、新しい映像技術。同場面の撮影では、朝ドラ史上初となるバーチャルプロダクションでの収録を導入したという。

「これまで焼け野原などはグリーンバックで撮影するのが一般的でしたが、今回はLEDスクリーンを背景に、手前にリアルのがれきセットを配置する手法を取り入れました。役者さんにとっても、グリーンバックの中で演技するよりも、奥行きまで視覚的に見える環境の方がより感情移入しやすい。映像表現として非常に高いクオリティを実現できているので、技術的な挑戦も含めて注目していただきたいですね」

 戦争というテーマを多角的に描く『あんぱん』。嵩、そしてのぶの体験を通じて、我々視聴者は平和の意味をあらためて考えることになりそうだ。

■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、加瀬亮、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、細田佳央太、高橋文哉、中沢元紀、大森元貴、二宮和也、戸田菜穂、浅田美代子、吉田鋼太郎、竹野内豊、妻夫木聡、阿部サダヲ、松嶋菜々子
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK

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