ちいかわ転売騒動にみる、キャラグッズ“爆買い”の心理 人はなぜモノを集めたがるのか?
人はなぜ、モノを集めたくなるのだろうか。
「好きだからこそ絶対に手に入れたい」
「集めてSNSに載せたい」
その動機はさまざまだが、そうした“コレクション欲求”が一気に表面化したのが、先日起きた「ハッピーセット×ちいかわ/マインクラフト」騒動だ。
5月16日から全国のマクドナルドで販売が始まったのは、人気漫画『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ(通称:ちいかわ)』と、ゲーム「Minecraft(マインクラフト)」の実写映画『マインクラフト/ザ・ムービー』のハッピーセットのおもちゃ。2作品の同時展開ということもあり、販売前から大きな注目を集めていた。
マクドナルドは「2種あわせて、おひとりさま4セットまで」と個数制限を設け、「転売または再販売、その他営利を目的としたご購入はご遠慮ください」と注意喚起を行っていた(※)が、当日の午前中からフリマアプリには出品が相次ぎ、SNSにも空箱詐欺やまとめ買い、高額転売のスクリーンショットが投稿されはじめた。
店舗では早朝から行列ができ、注文の待ち時間やメニューの品切れといった混乱が各地で発生。発売からわずか2日で全国での配布は終了し、「子どもに買ってあげたかった」「なぜこんなに早くなくなるのか」といった声も多く見られた。
“欲しくなる”仕組みの巧妙さ
今回の騒動に拍車をかけたのは、商品の人気そのものだけではない。ハッピーセットには「中身は開けるまでわからない」というランダム仕様、期間ごとに内容が切り替わる短期ローテーション、さらに数量限定という仕組みが組み込まれており、「今しか手に入らないかもしれない」という焦燥感や「全種類揃えたい」というコレクター心理を巧みに刺激する設計になっている。
ビックリマンチョコ、たまごっち、一番くじ……そしてSNS時代の“推しグッズ”まで。日本のキャラクターグッズ文化には、「限定」「非再販」「レア」「箱買い」といった言葉が常について回ってきた。ランダム封入のトレカやアクスタなど、「誰が出るかわからない」仕組みが主流となった今、“推し”を引き当てたい一心で何度も買ってしまう、いわゆる“沼”にハマる人も多い。
こうした仕組みが人々の収集欲をかき立てるのは、ただ「該当のキャラクターグッズが欲しい」という気持ちだけではない。「逃したくない」「手に入れられなかったら後悔するかもしれない」といった焦りや不安が、その根底にはある。SNSで他のファンの熱量を知ってしまう環境が揃っている今、「持っていない」ことが疎外感や劣等感につながり、収集欲をより一層強めてしまう場合もあるだろう。
さらに、そうした熱量に便乗するかたちで、近年では転売を目的とした購入も目立つようになった。“本当に欲しい人の手に届かない”という構造的なゆがみが、度重なる今回のような騒動を経て、次第に表面化してきている。