元“演出志望”見上愛、主演と助演で見せる異なる輝き 『かくかくしかじか』でも健在の演技力
そして、主演としての輝きとして忘れてはならないのが、映画『不死身ラヴァーズ』(2024年)で見せた“恋焦がれる芝居”だ。彼女が演じたのは、幼い頃に出会った運命の相手・甲野じゅん(佐藤寛太)に対して、無防備なほどにまっすぐな好意を伝え続ける少女・長谷部りの。劇中では中学生から大学生までの期間をひとりで演じきり、段々と積み重なる恋の重みと痛みに煩いながらも、一途すぎる思いを健気に叫ぶ彼女を、千変万化な表情で愛らしく演じてみせた。観ている人を魅了する溢れんばかりの笑顔も、多くの人の目に焼きついているのではないだろうか。
また、見上と言えば、助演としても数々の作品で印象的な輝きを見せている。前述した『光る君へ』は言わずもがな、2024年に放送された『マイダイアリー』(ABCテレビ・テレビ朝日系)で演じた、主人公・優希(清原果耶)の大学の友人・愛莉も印象的な役柄だった。次第に心を通わせていく5人組を軽妙なトークでつなぎながらも、さまざまな思いが渦巻く本心を打ち明けられない愛莉の複雑な胸中を、表情の機微や言葉の吐き出し方で繊細に表現する。
見上愛は“追い続けたい”女優だ 『光る君へ』『119』『風、薫る』などで進化する表現力
飛ぶ鳥を落とす勢いを見せる女優・見上愛。彼女が持つ独特な魅力はいったい何なのだろうか。 TVerで『119エマージェンシーコー…さらに翌年、消防局の指令管制員(ディスパッチャー)たちの現実と葛藤を描いたドラマ『119 エマージェンシーコール』(2024年/フジテレビ系)では、仕事への熱意を持ちながらも、人と協力するのが苦手で同僚と距離を置く女性・新島紗良を演じる。彼女がフィーチャーされた第3話では、恋人や同僚との距離感を測る彼女の心情に沿って、今までの頑なな態度を少しずつ解きほぐしていくグラデーションのある芝居を見せてくれた。
脚本に書かれたキャラクターの役割や立ち回りを大切にする姿勢は、元々、演出家志望だったという見上(※)の経歴も影響しているのだろう。主演だけでなく、助演としても主役を引き立たせながら、その輝きに埋没することなく、不思議と目を向けてしまう独自の光を放つ。自身の明るさを調節しながら、全体の絵のバランスに適した輝き方を見つけられる。
見上は著者・東村アキコの自伝的漫画を映像化した現在、公開中の映画『かくかくしかじか』でも、主人公の明子(永野芽郁)が絵を描く道に突き進むきっかけとなった同級生・北見を演じている。原作でも他とは違う独特な雰囲気を漂わせているキャラクターだが、髪型も似せた見上の漫画から抜け出したようなビジュアルも相まって、一度観たら忘れられないインパクトを残していた。
髪色や髪型を変化させる役柄も多い見上。しかし、その表情に宿る神秘性と瞳の奥に滲む強い光は、決して変わらず、消えることはなかった。これからも、出演する作品によって輝きを変化させる、星の瞬きのような芝居を楽しみにしたい。
参照
※https://crea.bunshun.jp/articles/-/53897
■公開情報
『かくかくしかじか』
全国公開中
出演:永野芽郁、大泉洋、見上愛、畑芽育、鈴木仁、神尾楓珠、津田健次郎、有田哲平、MEGUMI、大森南朋
原作:東村アキコ『かくかくしかじか』(集英社マーガレットコミックス刊)
監督:関和亮
脚本:東村アキコ、伊達さん
主題歌:MISAMO「Message」(ワーナーミュージック・ジャパン)
音楽:宗形勇輝
配給:ワーナー・ブラザース映画
©東村アキコ/集英社 ©︎2025 映画「かくかくしかじか」製作委員会
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