『地震のあとで』“焚き火ドラマ”として衝撃の第2話 原作小説の先の世界を描いた恐ろしさ
土曜ドラマ(NHK土曜夜22時枠)で放送されている『地震のあとで』は、村上春樹の小説『神の子どもたちはみな踊る』(新潮社)を原作とする全4話のドラマだ。
原作小説の舞台が1995年に限定されていたのに対し、ドラマの舞台は1995年からの30年となっており、今回の第2話「アイロンのある風景」は2011年1月から物語が始まる。
コンビニ店員として働く順子(鳴海唯)は、父親との関係が上手くいかず、高校3年の時に家出をして茨城にある海辺の町に辿り付き、今は啓介(黒崎煌代)と同棲している。
ある日、順子はコンビニで出会った関西弁の客・三宅(堤真一)が夜中に焚き火をしている姿を目撃する。
「火いうんはな、形が自由なんや。自由やから見てる者次第で何にでも見える。だから店員さんの中のひっそりとした気持ちがそこに映ったんやろうな」
火を見ていると普段は感じない「ひっそりした気持ち」になるという順子に対し、三宅はそう答える。
自由だからこそ「見てる者次第で何にでも見える」というのは、村上春樹の小説はもちろんのこと、『地震のあとで』というドラマについても語っているように聞こえる。
その後、順子は三宅といっしょに焚き火を楽しむようになる。順子を心配し、啓介も一緒について行くが、三宅に対しては悪い感情を持ってないようで、3人で焚き火を楽しむこともあるようだ。
3人で焚き火をしている時に、三宅が神戸出身であることを耳にした順子は、「神戸に家族がいるのではないか?」と尋ねる。三宅は、自分の家は東灘区にあり「16年前までは」家族がいたと答える。その後、三宅は、「何で自分だけ生きてるのだ?」と自問自答した後、「順ちゃんは、自分がどんな死に方をするか? 考えたことあるか?」と問いかける。
どんな生き方するのかもまだ全然わかってないのに、「死に方」なんて考えられないと言う順子に対し、死に方から逆算する生き方もあると答えた後、自分は冷蔵庫の中に閉じ込められて死ぬ夢を何度も見たと三宅は語る。
三宅はこの死のイメージは「予感」であり、ある種の「身代わり」だと言う。
また、三宅は絵を描いており、最近は「アイロンのある風景」という絵を描いたと言う。しかし、この絵に描かれたアイロンは実はアイロンではないと語り、順子はアイロンもまた「何かの身代わり」なのだと理解する。
焚き火もアイロンも、劇中で語られているように、何かの身代わりであり象徴なのだろう。
そこに冷蔵庫と同じ「死」のイメージを見出すことは可能だろう。だが、それが「身代わり」ならば「死にたい」という気持ちに、三宅が懸命に抗おうとしているとも言える。
順子もまた、自分が空っぽで何もないと思っており、生きることに対し不安を抱えている。線路に立って電車が来るのを待って離れるという行為を何度も繰り返している姿を見ていると、彼女もまた「死にたい」という気持ちを抱えているように見えるが、線路に立つという行為もまた、本当に死んでしまわないための「身代わり」なのかもしれない。