興収で読む北米映画トレンド
『マインクラフト/ザ・ムービー』歴史的ヒットで北米No.1 映画『スーパーマリオ』超える
『マインクラフト/ザ・ムービー』が歴史的な大ヒットスタートとなった。
4月4日に北米公開された本作は、6日までの3日間で興行収入1億5700万ドルを記録。海外市場で1億4400万ドルを売り上げ、世界興収は3億100万ドルとなっている。製作費は1億5000万ドルだから、現時点でほぼ黒字という驚くべき数字だ。
この猛烈な初動はほとんど誰にも予想できなかったもので、事前の予測では北米で7000~8000万ドル程度とみられていたのである。蓋を開ければ約2倍の成績で、『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』を超えて現時点で今年No.1の滑り出しとなった。
原作は全世界で3億本以上を売り上げた超人気ゲーム。ビデオゲームの映画化作品としても、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(2023年)の1億4636万ドルを抜いて歴代No.1のオープニング成績だ。
『ミッキー17』や『The Alto Knights(原題)』が興行的に苦戦したワーナー・ブラザースにとって、本作は絶対に失敗できない一作だった。それにしても、これほどのメガヒットは想定外だったのだろう。映画部門会長のマイケル・デ・ルカ&パメラ・アブディは、キャスト・スタッフや製作会社レジェンダリー・ピクチャーズだけでなく、配給・広報チームを含む自社の全部門に感謝を表明した。
本作ではジェイソン・モモア演じるゲーム店オーナーのギャレットのほか、ナタリー&ヘンリー姉弟、不動産業者のドーンが、突如すべてが四角形でできた異世界に転送される。イメージしたものをなんでも創り出せる世界で、4人は先住転送民のスティーブ(ジャック・ブラック)とともに、創造力を駆使してマイクラ世界を生き延びなければならない。監督は『ナポレオン・ダイナマイト』(2004年)のジャレッド・ヘスが務めた。
ワーナーはSNSやオンラインの動画広告に注力したほか、マクドナルドやドリトス、オレオなど45のブランドとタイアップを組んで史上最大級のプロモーションを展開。ゲーム・映画のファンだけでなく、めったに劇場へ出かけない層を含む老若男女の心をつかんだ。
調査によると、鑑賞の動機は52%が「面白そうだから」、42%が「『マインクラフト』が好きだから」、30%が「ストーリーやテーマに興味を持ったから」。都市部だけでなく全米どの地域でも映画館が賑わったというから、作戦は見事に奏功した。北米では観客の43%が18歳~24歳、35%が13歳~17歳と、Z世代の圧倒的人気も強力な追い風だ。
しかも出口調査によれば、本作は若者だけでなく45歳以上の観客からも好評。全体の50%が「期待通り」、39%が「期待以上」と回答し、65%が「強く薦める」と答えた。Rotten Tomatoesの批評家スコアは47%と渋いものの、観客スコアは87%と高く、出口調査に基づくCinemaScoreは「B+」評価。若年層ほど反応がいいのも特徴で、18歳未満の観客に絞れば「A」評価だったという。
本作のような映画の場合、批評家や映画ファンの反応は劇場興行にほとんど影響を及ぼさず、実際に北米の映画館は大いに盛り上がっている。InstagramやTikTokでは、劇場が熱狂と歓声に包まれ、子どもたちが客席で跳ね踊る様子すら広くシェアされているのだ。映画ファンにとってはぎょっとする光景だが、これもまた現代の映画体験なのだろう。こうした映画がきちんとヒットすることで、劇場公開作品の多様性は守られている。