金子雅和監督作『光る川』華村あすか、安田顕らの新場面写真公開 ロケーション撮影秘話も

『光る川』撮影秘話&新場面写真

 3月22日に公開される金子雅和監督の新作映画『光る川』の新場面写真が公開された。

 本作は、初長編となった『アルビノの木』が9カ国の映画祭で20受賞、第2作『リング・ワンダリング』がインド国際映画祭で日本人史上3人目となる最高賞(金孔雀賞)を受賞した金子監督の長編第3作。岐阜出身の作家・松田悠八の『長良川 スタンドバイミー一九五〇』を原作に、無垢な少年の眼差しを通し、現代化への分岐点となる高度経済成長期、そしてさらに昔、まだ人が自然への畏怖を持っていた時代が交錯して描かれる。

 物語の大きな要素となる、深く引き込まれそうな水辺、近寄りがたさすら感じさせる洞窟や滝、悠久の時を刻む山々の情景などはCGを使わずに撮影され、音楽は、細田守監督作品や瀬田なつき監督の『違国日記』などの音楽を手がけてきた高木正勝が書き下ろした。

 物語の根幹を支える女性・お葉を演じるのは、Netflix映画『シティーハンター』などの華村あすか。お葉との悲恋の相手・朔役をNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』などの葵揚、物語の眼差しとなる少年・ユウチャ役とお葉の弟・枝郎役を、瀬々敬久監督『春に散る』にも出演した子役の有山実俊が一人二役で演じている。そのほか、足立智充、堀部圭亮、根岸季衣、渡辺哲、山田キヌヲ、そして『リング・ワンダリング』に続く出演となる安田顕らが共演に名を連ねた。

 本作では、少年・ユウチャ(有山実俊)が悲しみを抱えるお葉(華村あすか)の魂を解放するべく、伝承に従って木の器に水を汲み、上流の淵を目指し川を、更には悠久の時間をさかのぼっていく。その中でキーとなるが“手仕事”“伝統工芸”だ。

 岐阜県ですべての撮影が行われたが、岐阜は数々の自然ロケを行ってきた金子監督にとって初挑戦の地。ほぼ土地勘がない中、まずは撮影の約1年半前、原作となった小説『長良川 スタンドバイミー1950』の舞台である岐阜市を流れる長良川周囲を訪れたという。以後、長良川の河口から源流・分水嶺まで約125kmをたどり、白川郷、高山などにも足を伸ばし、さらには長良川本流だけでなく支流域まで眼差しの対象を広げていき、土地の空気や歴史性を体感するシナハンを繰り返した。同時にその場に根付く民話などを調べ上げ、その過程で、12万体の木仏を彫ると祈念し日本中を旅した仏師・円空の逸話、木地屋と地元民の交流を描いたと思われる椀貸伝説といった民間伝承が、大きなインスパイア元となったという。「監督の世界観へ自由に飛躍させて下さい」と期待する松田の声に応えて、私小説である原作から大幅に物語を肉付けし、特に少年・ユウチャが見る紙芝居の中の世界(お葉と朔の悲恋)は完全なオリジナル脚本として作り上げた。

 岐阜県内、郡上市、山県市、美濃市、下呂市、高山市が全ロケ地となったが、金子監督は約4週間、朝から日没までロケハンを行い、実際に撮影をしたロケ地の3倍以上の箇所・範囲を巡ったという。ここからクランクインに向けて、本作のもうひとりの主人公と言っていい川=水辺の透明感や、木地屋たちが小屋掛けする広葉樹林の緑の深さにこだわり、実際の撮影条件・スケジュールも合わせ場所を絞り込んでいった。それらロケ地はどこも山深い場所。眼の前まで車で乗り付けられるわけもなく、車を止めてからさらに撮影隊は機材を抱え、時には数十分の山道を歩いたり、膝まで水に浸かりながら沢を渡って滝の裏側の撮影現場にたどり着く。平坦な場所はほぼない。金子監督日く、その土地・その場所の空気を体感した上で役として存在することをキャストたちに求めたという。

 撮影にあたり、葵や渡辺らが演じる“山の民”が仮住まいして木の器を作る木地屋小屋が建てられた。器作りに適した木を求めて全国各地の山を移動する木地屋が好む広葉樹林帯が広がるのは標高約800m、携帯の電波も入らない場所だが、まさに映画世界の支えとなるシーンであるため、『Shall we ダンス?』『幻の光』『あん』など数多くの作品を手掛けてきた美術監督の部谷京子と地元林業関係者により、その場に自生する木や笹を生かした小屋が完成した。当時の小屋の建て方を研究しながら行ったこの作業には、8月の猛暑の山中、約3週間が費やされた。

 さらに映画にリアリティをもたらしたのは木の器。原木を伐り、斧で荒型を切り出し、ろくろでお椀の形に整えていく。映画内では過去に木地屋が行った実作業が忠実に再現されているが、ここにも手仕事にこだわる職人たちを岐阜、および近県から金子監督が呼び集めた。東近江の特殊伐採のプロ、飛騨の古き工法を再現できる杣大工、美濃で木工の活動を普及するNPO理事といった、木のスペシャリストたちだ。

 公開された場面写真には、そんな壮大なロケーションの中に佇むユウチャ(有山実俊)やお葉(華村あすか)、お葉の父・常吉(安田顕)らの姿が捉えられている。

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■公開情報
『光る川』
3月22日(土)、ユーロスペースほか全国公開
出演:華村あすか、葵揚、有山実俊、足立智充、山田キヌヲ、髙橋雄祐、松岡龍平、堀部圭亮、根岸季衣、渡辺哲、安田顕
脚本・監督:金子雅和
音楽:高木正勝
共同脚本:吉村元希
美術監督:部谷京子
撮影:山田達也
音響:黄永昌
OPアニメーション:高橋昂也
原作:松田悠八『長良川 スタンドバイミー一九五〇』
製作:長良川スタンドバイミーの会
制作プロダクション:プロジェクト ドーン
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
2024年/日本/カラー/1.85:1/5.1ch /DCP/108分
©長良川スタンドバイミーの会
公式サイト:culture-pub.jp/hikarukawa/
公式X(旧Twitter):@re_river_movie

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