須賀健太、“名バイプレイヤー”としての現在地 香取慎吾との共演がもたらす新たな意義
香取慎吾が主演を務めるドラマ『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』(フジテレビ系/以下、『日本一の最低男』)の第8話は、特定の世代の視聴者にとってはかなり胸が熱くなるものだったのではないだろうか。それはもちろん、いまから23年前に放送され大ヒットドラマとなった『人にやさしく』(2002年/フジテレビ系)ぶりに、当時はまだ幼かった須賀健太と香取の再共演が実現したからである。
本作は、人生の崖っぷちに立たされた“日本一の最低男”こと大森一平(香取慎吾)が、義弟の家族と生活をともにするうち、やがて社会を変えていこうと奮闘していくことになる新しいホームドラマだ。
シングルファザーである義弟の小原正助(志尊淳)は、仕事と家事・育児の両立に限界を感じ、一平を頼ることになった。この状況を、“日本一の最低男”は利用するのだ。不祥事を起こしてテレビ局を追われた一平は、政治家になって社会的に再起してみせようと目論んでいる。そう、世間からのイメージアップのために小原一家を利用しているところなのである。
とはいえ、小原一家をはじめとする人々との深い関わり合いをとおして、これまで気が付かなかった社会のさまざまな問題に直面し、いまは本気で社会を変えようとしているように思える。他者や社会との強いつながりは、それほどまでに人間を変えることができるということなのだろう。
そんな本作の第8話で須賀が演じていたのは、一平たちも馴染み深い商店街の青年部に所属する宮島誠という男性だった。彼は一平の同級生に連れられて、とある相談をしにやってきた。聞けば小学校近くの学童の閉鎖によって、かなり困っているのだという。そこで新しい学童が決まるまでの期間、一平は誠らの子どもを預かることになるのだ。
同じく香取が主演を務めたドラマ『人にやさしく』(フジテレビ系)は、こちらもまた“新しいホームドラマ”といえるものだった。あれから23年の時を経ても、“新しいホームドラマ”だといえる。なぜなら、主人公・前田前(香取慎吾)をはじめとする3人の男たちが、親に捨てられた小学生の五十嵐明(須賀健太)とともに、特別な家族関係を築き上げていくものだったからだ。当時の私もまだ小学生だったが、学校へ行けばこのドラマの話題で持ちきりだったし、主題歌であるTHE BLUE HEARTSの「夢」を誰もが口ずさんでいたものである。
そして23年の時が経ち、令和の“新しいホームドラマ”で香取と須賀が再び共演。しかも本作でも香取は、またも子どもを“預かる”という立場に立っている。そしてそこへ、子を“預ける”立場としてやってきたのが須賀なのだ。むしろこの宮島誠という役は、須賀が演じるべきものだったとさえ思えてくるほど。須賀の出番はかぎられたものだったが、ほどよい具合に力の入った演技で誠実な父親像を立ち上げ、一平が新しいことに挑戦するその道筋を作った。やはり、胸が熱くなる展開だっただろう。