市原隼人の経験値が生む“貫禄” 『べらぼう』の世界で鳥山検校をどう主張していく?
本作の公式ガイドである『NHK大河ドラマ・ガイド べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~ 前編』にて検校について市原は「盲人組織の大親分で大富豪。特別な宿命を背負う彼は人の心の痛みを読むことができる。なので人の心の隙間に入り込むこともできて、よくも悪くも他者を導けるのだと思います。ただ、その生業から敵も多いはずで、人知れず孤独の中で生きてきたのでは」と語っている。私たちはまだ彼がどんな人物なのかを知らないわけだが、ここで市原が語っていることの一端をあの検校からは感じた。ここからどうこのキャラクターを『べらぼう』の世界の中で主張していくのだろうか。
さらに公式ガイドの中で市原は「瀬川を身請けしたものの彼女の心は自分のものにできず、財力ですべてを手にしてきた検校の意地とプライドが崩れていく。このとき検校はどんな行動をとるのか。恋愛は人間の本質的な欲望で、そこから生まれる幸福や憎悪、そして人間愛は、現代人も変わらず共感できることだと思うので、大事に表現していきたいです」と述べている。私たちが第8話で抱いた印象は、これからどのように変わっていくのか。あの“厳かさ”が崩れていく過程にこそ、市原の演技者としての真価が表れてくるはずである。
白濁したコンタクトレンズは、市原が自ら提案して採用されたものなのだという。装着するとほぼ何も見えない状態になるらしい。クランクイン前に視覚障害者の支援施設を訪ねたり、暗闇の中での感覚を体験するイベントに参加したことなども市原は明かしている。役を演じることの重さ、そして誰かの人生を背負うことへの責任感を、彼の姿勢からは強く感じる。『おんな城主 直虎』(2017年)、『鎌倉殿の13人』(2022年)に続く、3度目の大河ドラマ。盲人である鳥山検校を演じていくうえで、ここから先はより技術的なものが必要になってくることと思う。俳優・市原隼人の変化するパフォーマンスをこの心に焼き付けたい。
■放送情報
大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』
総合:毎週日曜20:00〜放送/翌週土曜13:05〜再放送
BS:毎週日曜18:00〜放送
BSP4K:毎週日曜12:15〜放送/毎週日曜18:00〜再放送
出演:横浜流星、小芝風花、渡辺謙、染谷将太、宮沢氷魚、片岡愛之助
語り:綾瀬はるか
脚本:森下佳子
音楽:ジョン・グラム
制作統括:藤並英樹
プロデューサー:石村将太、松田恭典
演出:大原拓、深川貴志
写真提供=NHK