『恋するムービー』“恋愛映画”を超えた愛の名作 チェ・ウシク×パク・ボヨンらが演技の饗宴
本作は、『恋するムービー』というタイトルから連想される、ロマンティックコメディだけでない“愛”を描いたものだ。ムビと両親との家族愛、ギョムとジュンの兄弟愛、恋から発展して育てていく愛、完成形の愛に対する感情の折り合いと、喪失から再生していく自身への愛が描かれる。チェ・ウシクは、本作への出演を決めた理由として「僕が好きな“愛と愛”がしっかり描かれていた」と述べている。
演出のオ・チュンファン監督は、イ・ジョンソクとの『あなたが眠っている間に』、IUとの『ホテルデルーナ~月明かりの恋人~』、パク・ウンビンとの『無人島のディーバ』などを手掛けたヒットメーカーであり、『その年、私たちは』のイ・ナウン脚本家とタッグを組み、チェ・ウシク×パク・ボヨンという俳優たちと最高のシナジーを生み出した。
パク・ボヨンはチェ・ウシクの演技力についてチェ・ウシクに次のように伝えたという。
「『ウシクと演技するとき、緊張する。ウシクがすごく上手いから。私、本当に正直、ウシクに負けたくない』そういう気持ちにさせられた」と語っている。パク・ボヨンが「すごく上手い」と絶賛するチェ・ウシクの演技力を前に、負けたくないという思いで挑んだのだから、ふたりのケミが素晴らしいのは当然だろう。
さらに、映画業界がテーマの作品だけあり、全編に渡り映画のタイトルや名セリフ、オマージュが盛りだくさんで楽しめる。副題も映画の台詞であり、<友達とは親しく 敵とはもっと親しく>は、『ゴッドファーザー PART II』のアル・パチーノ演じるマイケル・コルレオーネの名セリフであり、<君は悪くない>は『グッド・ウィル・ハンティング』、<愛こそはすべて>『ラブ・アクチュアリー』など、映画好きにはたまらない仕掛けだ。ギョムたちの話や、ポスター、ビデバーの照明にも『花様年華』や他映画タイトルが見られるので、それらを探す面白さも味わえる。
人が抱える罪悪感の中でも重く長く心に抱えるものとして「死」に対する「自責の念」があるが、どんなに尽くしても出てくるとい罪悪感が、ギョムとムビの場合には、自分が関係しているという思いがあり拭いきれないのは当然だろう。ギョムは、明るさと愛嬌で、ムビは人の心と距離を取ることで、それぞれが喪失や罪悪感を棚上げしてきたのだ。あまりにも心に負荷がかかる感情は、その感情を処理できるほど心が成長するまで、棚上げしておくのだ。ギョムやムビのように運命的にその感情を共に癒してくれる人や、タイミングがくるその日まで。
脚本家イ・ナウンが描いた愛の世界を、緑の木々に光が煌めくさまや、ギョムとムビが赤い車で黄色い花咲く道の中、ピンク色に空が染まる感性的な映像描写など、オ・チュンファン監督の演出が彩っていく。メロの語源ともなっている心揺さぶる音楽も心地良い。OSTでは、「Under Sunset」でイ・ジュニョンが甘い歌声でシジュンのジュアへの思いを歌い上げている。
チェ・ウシク、パク・ボヨン、キム・ジェウクら俳優陣による心情を繊細に表現する演技の饗宴に、“恋愛映画を超えた恋愛映画”を堪能した気分になった。“心”という目に見えないけれど確かに人の中心にあり、とても尊く大切なものが、喪失から再生していく物語は、心が温かくなる余韻が残った。クリスマスになると『ラブ・アクチュアリー』が観たくなるように、『恋するムービー』は愛の季節であるバレンタインになると観たくなる作品になりそうだ。そんな恋愛映画を超えた、感性的な愛の名作が誕生した。
参照
https://www.cinemacafe.net/article/2025/02/19/97857.html
https://youtu.be/aWcRfP0avSc?si=dcjxNrXlY0kRgthi
https://youtube.com/shorts/wj_NtAvVDjk?si=UBXRAhJRUz2yobkX
■配信情報
『恋するムービー』
Netflixにて独占配信中
出演:チェ・ウシク、パク・ボヨン、イ・ジュニョン、チョン・ソニ
演出:オ・チュンファン
脚本:イ・ナウン