『おむすび』“朝ドラの安心感”濱田マリによる言葉の重み 聖人の“フラグ”の勘違いを願う

 NHK連続テレビ小説『おむすび』第20週は不穏な走り出しだ。

 人間ドックで胃の再検査が必要という結果となった聖人(北村有起哉)。心配になってネットで調べると、そこには“胃がん”の文字が。聖人が気にしていた胃の痛みや不快感などは、胃がんの初期症状に当てはまっていた。気持ちは分からなくもないが、これは悪手。ネットには人の不安を煽る不確かな情報も転がっていて、まんまと踊らされて、気が気でなくなることはよくある。


 一方、そんなことになっているとは露程にも思わない結(橋本環奈)は、八重子(徳田尚美)の容態の変化に気づけなかったことを引きずっていた。八重子の膵臓に見つかった腫瘍は良性と判明。担当医の蒲田(中村アン)は「私の仕事はここまで。あとは米田の仕事」と術後の食事療法を結に任せる。彼女は管理栄養士の存在を軽んじていない。先週の厳しい言葉も、結をその道のプロとして認めているからこそなのだ。

 結は気持ちを立て直し、八重子の食事療法に臨もうとするが、夫の伸彦(や乃えいじ)から「あなたに妻の担当をしてもらいたくありません」と拒絶されてしまう。八重子の腫瘍を見つけられなかったのは、結のせいではない。それは蒲田はもちろん、きっと伸彦もどこかで理解している。ただ、結が八重子の近くにいて何も違和感を感じ取れなかったことは事実であり、信頼していただけに落胆が大きいのだろう。


 経験と知識がまだ足りないことを自覚した結は八重子の担当を外れようとするが、栄養科長の塚本(濱田マリ)は却下。経験と知識はこれから積めば良いことであって、それよりも大事なことは「仕事に慣れないこと」だと諭す。病院管理栄養士になって4年目。ちょうど仕事に慣れて気が緩む頃であり、もしかしたら結もそういうところがあったのかもしれない。「私たちは命と向き合う仕事をしてる。あなたが今回感じた気持ちをずっと忘れなければ大丈夫」と塚本は結を鼓舞した。さすがは朝ドラの“安心感”、濱田マリ。台詞に説得力と重みがある。

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