深川麻衣、30代で変化した仕事への向き合い方 「未知の経験を積んでいけることにワクワク」
深川麻衣が主演を務める映画『嗤う蟲』が1月24日より公開されている。同作は、日本各地で起きた村八分事件をもとに、実際に存在する“村の掟”をリアルに描き、“村社会”の闇を暴くヴィレッジスリラー。主演の深川は、若葉竜也演じる輝道の妻・杏奈を演じている。
スリラー初挑戦となる深川は作品とどう向き合い、演じたのか。「善人に見せないように」意識したという役作りや『愛がなんだ』(2019年)以来の共演となった若葉の印象、20代から変化した仕事の向き合い方などを語ってもらった。
深川麻衣が体現した“母としての強さ”
――深川さんは意外にもスリラーに挑戦するのは初めてだったそうですね。
深川麻衣(以下、深川):そうなんですよ。初めてのジャンルだったので、嬉しかったです。
――完成した映画を拝見させていただいて、最後までじわじわとした恐怖感が体にまとわりついてくる作品だなと感じました。撮影を振り返っていかがですか?
深川:嫌な空気がずっと漂っているような、不穏な空気感の映画なのですが、城定(秀夫)監督がとても和やかな性格の方でみんなとしっかりコミュニケーションを取りながら撮影できたので、現場の雰囲気自体は非常に朗らかでしたね。映画自体がじっとりしているので、もし空気がピンとしていたら、気持ち的にも疲れてしまうと思ったので、そのメリハリに救われました。
――完成した映画をご覧になっていかがでしたか?
深川:今回ワンシーンワンカットで撮影することが多かったので、もちろん流れは台本を読んで知っているのですが、それが繋がったときにどんな映像になるのか全く想像がつきませんでした。いつも自分が出ている作品は冷静に見られなくて、どうしても自分の粗探しをして、プチ反省会のようになってしまうのですが、今回は純粋にエンタメとして楽しめました。予告編を見た方から「ホラーなの?」とか「怖そう」という感想をもらうことが多かったのですが、ホラー的な脅かしや驚かせる要素とは少し違って、人間としての怖さや切なさが描かれているんです。一見すると、この2人が追い詰められていく映画だと思うかもしれませんが、実際にはどちらにも同情したくなるような要素が含まれていて、どちらの肩も持ちたくなる感情が芽生えるというか。そういったところが他のスリラー作品とは少し異なる部分だと思うので、怖いのが苦手な方にもぜひ見てほしいですね。
――田口トモロヲさんの存在感も強烈でした。
深川:田口さん自身はとても穏やかで優しい方なんですけど、やっぱり役へのスイッチが切り替わると、何が飛び出してくるかわからないような怖さがあって。脚本や台本を読むときって、情景を頭の中で想像しながら読むんですが、性別は違うものの、自分がもしこの役をやったら、同じセリフでも出てこなかったような言い回しやアプローチの仕方が、どんどん田口さんから飛び出してきて、杏奈と同じようにドキドキしながら撮影していました。田久保さんの一見優しそうに見えるけれど、裏で何を考えているのかわからないというバランスは、田口さんにしかできない絶妙なものだなと思いました。
――深川さんが演じられた杏奈は、村の掟に抗いつつも、次第にその雰囲気に飲み込まれていくという役です。演じるにあたってどのようなことを意識されましたか?
深川:まず、城定監督から「この夫婦をただの善人には見せたくない」という話をいただいたので、善人に見せないようにどう表情を作っていくのかを意識して演じました。あと、村人キャストの皆さんの個性がとても強いので、私たち夫婦が奇をてらったことをしすぎると、ちょっと大げさに見えてしまうかもしれないな、と。だから、リアクションはあくまでナチュラルにという点は大切にしていましたね。
――杏奈は作中で母親にもなります。その辺りの変化は意識しましたか?
深川:これまでも母親役は何度かやらせていただいたのですが、ここまで赤ちゃんと密接に関わる役は初めてで。もちろん走ったりするシーンや危険な部分は人形を使わせてもらいましたが、安全面にはとても気をつけました。ただ、実際に母親の経験がないので、赤ちゃんを抱っこしたりあやしたりする所作に関しては、ぎこちなさが出ないように何度も練習しましたね。
――物語のクライマックスでの深川さんの笑みがすごく印象に残りました。あのシーンはどういう感情で演じられたのでしょうか?
深川:あのシーンがおそらくラストカットだったかなと思います。確かセリフが違う2パターン撮って、そのうちの片方が映画のラストで使われています。やっぱり杏奈には守るべき子どもという存在がいて、でも輝道と過ごした時間もきっと走馬灯のように駆け巡っているんだろうなと想像しながら作り上げていきました。
――1人の母親としての強さみたいなものが現れている?
深川:そうですね。1人の女性として、母としての強さも映画の中で丁寧に描いていただいたので、そこは最後のシーンでも意識しました。たくましさというか、母としての強さ。それを観てくださった方々に感じてもらえたらいいなと思っています。