第97回アカデミー賞ノミネーション発表 『エミリア・ペレス』が最多13ノミネート
第97回アカデミー賞のノミネーションが、1月23日夜(日本時間)に発表された。発表を務めたのは、『ウィキッド ふたりの魔女』で強い印象を残したボーウェン・ヤンと、『ボトムス ~最底で最強?な私たち~』の出演で知られるレイチェル・セノット。2人ともコメディアンとして知られており、発表も小気味良い掛け合いで進めていた。また、今年はロサンゼルスの山火事によってノミネーション発表が遅れたこともあり、冒頭で映画芸術科学アカデミーのジャネット・ヤンとビル・クレイマーから被害に遭った人に対してのコメントがあった。
昨年度は日本作品が数多くノミネートされ、『ゴジラ-1.0』の受賞なども話題になった。一方、今年は短編アニメーション賞にて、『ふたりはプリキュア』シリーズを生み出した西尾大介監督と鷲尾天プロデューサーによる『あめだま』と、ジャーナリストの伊藤詩織の初監督作品『Black Box Diaries(原題)』がノミネート。
『あめだま』は、韓国の絵本作家ペク・ヒナの同名短編作品と『ぼくは犬や』を原作としている。コミュニケーションをとるのが苦手な主人公・ドンドンが、文房具店で手に入れた不思議な“あめだま”の力によって、人や犬、ソファーなどの“心の声”が聞こえるような物語だ。加えて、『Black Box Diaries(原題)』は伊藤監督自信が被害にあった性的暴行に対する調査に乗り出す記録を映したドキュメンタリーである。
また、短編ドキュメンタリー部門では、山崎エマ監督による『小学校〜それは小さな社会〜』から生まれた短編『Instruments of a Beating Heart(原題)』もノミネートされている。
さて、今年の最多ノミネーションはフランスの『エミリア・ペレス』で13ノミネートとなる。昨年の『関心領域』のように、近年は作品賞に国際長編部門の作品がノミネートされる傾向があるようだ。『エミリア・ペレス』に続き、『ウィキッド ふたりの魔女』と『ブルータリスト』が10ノミネートとなる。
『ウィキッド ふたりの魔女』は、アカデミー賞の前哨戦とも言われるゴールデングローブ賞では主要賞で4ノミネート、1受賞という結果だったため、オスカーの方が良い成績が期待できそうな予感。主演のシンシア・エリヴォとアリアナ・グランデがそれぞれノミネートされているが、競争相手はなかなか手強い。ゴールデングローブ賞で主演女優賞を受賞したデミ・ムーアと、助演女優賞を受賞したゾーイ・サルダナもノミネートされている。
新教皇選出を巡るスリラー『教皇選挙』や、ティモシー・シャラメがボブ・ディランを演じた『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』はそれぞれ8ノミネート。以上の5作品すべてが作品賞にノミネートされている。
同じく作品賞にノミネートされた『ANORA アノーラ』は、第77回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した注目作。若きストリップダンサーのアノーラがニューヨークを舞台に幸せを勝ち取ろうと奮闘する人生讃歌の物語だ。そしてノミネーション発表時に(特に主演女優賞において)最も大きな歓声が大きかったのがブラジルの『I’m Still Here(原題)』である。主演女優賞にフェルナンダ・トーレスがノミネートされ、彼女の母であり同賞に初めてブラジル人女優としてノミネートされたフェルナンダ・モンテネグロの後に続いている。果たして受賞となるのか。
また、日本では5月16日公開のボディホラー映画『サブスタンス』も数多くの部門にノミネートされている。従来、アカデミー賞はより保守的で、ホラーなどのジャンル作品は少なかった。近年は『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』や『哀れなるものたち』など過激でユニークな作品も作品賞にノミネートされており、アカデミー賞の投票者の年齢層や好みに広がりが感じられる。
同じくホラー映画であり、F・W・ムルナウの『吸血鬼ノスフェラトゥ』のリメイク作品である『Nosferatu(原題)』も複数ノミネートを果たした。『ライトハウス』や『ウィッチ』などのA24作品で知られるロバート・エガースが監督を務めた本作は、クラフトマンシップ感じられる作品作りが高く評価されている印象で、受賞の行方にも期待が高まる。
第97回アカデミー賞授賞式は、日本時間3月3日にハリウッドのドルビー・シアターで開催される予定だ。