『しかのこのこのここしたんたん』でシカ三昧! のこたん&こしたんになぜ惹かれるのか
世界をシカ色に染めたTVアニメ『しかのこのこのここしたんたん』のBlu-ray BOXが12月18日にVAPから発売された。放送・配信された全12話のエピソードに加え、話題沸騰のオープニングや、鹿せんべいの製造現場をルポしたエンディングをノンクレジットで収録していて、観た人すべてをシカだらけの不思議な時空へと誘う。“のこたん”こと鹿乃子のこを演じた潘めぐみと、“こしたん”こと虎視虎子役の藤田咲によるスペシャルオーディオコメンタリーも必聴だ。
「しかのこのこのここしたんたん」。目で見て口で言おうとしても、最初は誰だって間違えそうなこの言葉を、今では誰でもスルリと口にできる。それこそ外国の人でも、「しかのこのこのここしたんたん」と口ずさみながら体を揺すったり、手の指で頭の上にツノを作って踊ったりできる。これはすべて、TVアニメ『しかのこのこのここしたんたん』のおかげだ。
まず始めに、シカを前に脇を広げて左右に揺れる少女を映し、リズミカルに何度も「しかのこのこのここしたんたん」と繰り返されるイントロ耐久動画が耳目を集めた。そして、「シカ色デイズ」と題されたこの楽曲は、『しかのこのこのここしたんたん』のオープニングで、「ぬん」というかけ声に続いて繰り返し歌われたことで、大勢の人たちの脳へと深く刻み込まれた。こうなるともはや忘れない。絶対に。
この「シカ色デイズ」という楽曲も、YouTubeでの再生回数が2997万回(1月現在)という、TVアニメのオープニングとしては驚異的なヒット作となった。「カラスは真っ白」で独特な音楽の世界を、ピーキーでグルービーなロックサウンドで聴かせたやぎぬまかなの詞と、fhánaのギタリストだった和賀裕希による変幻自在な曲の融合が、見事に果たされた結果だろう。
あまりのバズりぶりを、『しかのこのこのここしたんたん』のキャストやスタッフも歓迎していたかと思いきや、発売されたBlu-ray BOXに特典として収録された第1話「ガール・ミーツ・シカ」のスペシャルオーディコメンタリーで、鹿乃子のこを演じた潘めぐみが「本編へのハードルが上がると思っていた」と振り返っている。これで本編が面白くなければ、詐欺だなんだと言われてシカせんべいを投げつけられる可能性もあったからだろう。
いよいよ放送が始まって、爆笑と呆然が入り混じったコミカルでシュールな展開を見て誰もが大喜びしたことで、キャストもスタッフも安心したようだ。ひとりでボケてツッコんでといった演技をしていたこしたん役の藤田咲も、オーディオコメンタリーで「皆に受け入れられるか心配していた」と、放送開始前の不安を話していた。結果は上々。電線の上という異様な場所から登場し、教室には壁や扉をぶち壊しながら入ってきて、ネコを被ったこしたんの本性に迫るのこたんの破壊力を目の当たりにすれば、誰だって気に入るはずだ。
第2話以降も『しかのこのこのここしたんたん』は、コミカルでシュールでローカルな展開を続けざまに繰り出して、観た人を虜にしていく。第1話で少しだけ姿をのぞかせたこしたんの妹の餡子が、第2話の「シカ・ミーツ・暗ガール」でダークなオーラをまき散らしながら本格的に登場し、ギョッとするような視線を振りまき場を圧倒した。第3話では、のこたんに憧れたという馬車芽めめが登場し、人ならぬシカを目指すという予想だにしない展開に翻弄された。
そうした展開から浮かんでくるのは、のこたんというキャラクターの魅力だ。ギャグアニメのようにデフォルメされた表情で、ツノを取ったり暴れ回ったりしたかと思えば、アクションアニメの主人公のように、特殊部隊さながらの猟友会の激しい攻撃にも立ち向かう。かと思いきや、体育祭に真剣に取り組む学園青春アニメの主人公のような姿も見せる。そんな変幻自在さに魅了されつつ、瞬間瞬間の変わりっぷりに、こしたんといっしょになってツッコミを入れながら、次へ次へとエピソードを追っていける。そんなヒロインだった。