『スキップとローファー』の現代性とは? “キャラ”を演じることの疲弊と克服

 志摩は、子役として活動していた時期があり、そのことを隠している。子役の活動は自分の意思というより母親が喜ぶからやっていたのだという。志摩と同じく子役をしていたモデルの西城梨々華が、志摩の母親に対して「また聡介を自分のために演じさせるの」と言い放つシーンが象徴的だが、演技と「キャラをかぶる」ことの近似性が志摩のエピソードには、表れている。

 その近似性に気が付くと、他のキャラクターが抱えているものにも理解が深まる。ミカはコンプレックスを抱えていた過去から脱却するために、ダイエットもしてオシャレも研究して、カッコいい男子を捕まえようと良い外面を作ろうと努力している。過去の体験から劣等感を抱えていることが、根はやさしい彼女をキャラを演じる努力に向かわせている。

 村重結月の場合は、外見の美貌ゆえに、周囲から勝手にこういうキャラだと決めつけられやすいことが彼女を苦しめている。

 ほとんどのキャラクターが、表向きのキャラとその裏にある自分とのギャップに苦しんでいるのだ。

 キャラを作るのは人間関係を円滑にするための手段でもあり、今多くの人がやっていることでもある。現代は一億総キャラ化時代とも言えるだろう。とはいえ、キャラを演じることに消耗している人も多いだろう。そういう時代に『スキップとローファー』は、キャラとその裏側の人間を描くことを試みている。

 そのキャラ作りをしていないのが、主人公の岩倉美津未だ。彼女はいわゆる「天然」キャラと認識されているが、演じているわけではない。だからこそ、周囲のキャラクターと好対照をなし、全くキャラ属性の異なるクラスメイトを繋げる媒介となれている。

 表向きのキャラ属性を乗り越えて、素の人間として人を見ることができることの豊かさが本作には描かれている。現代に生きる我々は、日々キャラに囚われながら生きている。そんな現代人の気持ちを掬い取りながら、キャラの皮を脱いだ人間関係を築くことの大切さを描いている。この作品が胸に沁みる理由はここにあると筆者は思う。

参照
※ https://media.comicspace.jp/archives/16003

■作品情報
『スキップとローファー』第2期
©高松美咲・講談社/「スキップとローファー」製作委員会
公式サイト:https://skip-and-loafer.com/
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/skip_and_loafer
公式Instagram:https://www.instagram.com/skip_and_loafer/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@skip_and_loafer

■放送・配信情報
『スキップとローファー』第1期 再放送
NHK Eテレにて、2025年1月5日(日)スタート 毎週日曜17:00~放送
各配信サービスにて配信中
原作:高松美咲『スキップとローファー』(講談社『月刊アフタヌーン』連載)
監督・シリーズ構成:出合小都美
副監督:阿部ゆり子
キャラクターデザイン・総作画監督:梅下麻奈未
総作画監督:井川麗奈
プロップ設定:樋口聡美
美術監督:E-カエサル
美術監修:東潤一
美術設定:藤井祐太
色彩設計:小針裕子
撮影監督:出水田和人
3D監督 :市川元成
編集:髙橋歩
音響監督:山田陽
音楽制作:DMM music
音楽:若林タカツグ
アニメーション制作:P.A.WORKS
製作:「スキップとローファー」製作委員会
オープニングテーマ:須田景凪「メロウ」
エンディングテーマ:逢田梨香子「ハナウタとまわり道」
出演:岩倉美津未:黒沢ともよ、志摩聡介:江越彬紀、江頭ミカ:寺崎裕香、村重結月:内田真礼、久留米誠:潘めぐみ、ナオ:斎賀みつき、迎井司:田中光、山田健斗:村瀬歩、兼近鳴海:木村良平、高嶺十貴子:津田美波
©高松美咲・講談社/「スキップとローファー」製作委員会
公式サイト:https://skip-and-loafer.com/
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公式Instagram:https://www.instagram.com/skip_and_loafer/
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