宇野維正の映画興行分析

初登場3位『グラディエーターII』 このままでは今後はキャストの来日がなくなってしまう!?

 11月第3週の動員ランキングは、『踊る大捜査線』シリーズのスピンオフ映画2部作の後編『室井慎次 生き続ける者』がオープニング3日間で動員26万8000人、興収3億7700万円をあげて初登場1位となった。この数字はオープニング3日間で3億6100万円の興収をあげた前編の『室井慎次 敗れざる者』とほぼ同じ成績だが、『室井慎次 生き続ける者』はその前週末に全国で先行上映をおこなっていて、その数字を合わせると6日間で興収5億8700万円。前編は賛否が分かれる評判だったが、熱心な観客はちゃんと後編でも劇場に駆けつけたことがわかる。

 3位に初登場したのはリドリー・スコット監督による『グラディエーター』の24年ぶりとなる続編『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』。オープニング3日間の動員は10万3000人、興収は1億6300万円。北米公開から1週早く世界各国で公開された同作は、映画監督として47年の輝かしいキャリアを誇るリドリー・スコットにとって過去最高の好スタートを記録しているが、それと比べると少々物足りない成績。もっとも、2000年6月に日本公開された前作『グラディエーター』も、公開当時2週連続で動員ランキングのトップに立ったものの、最終興収は15億6000万円と、洋画全盛の当時としては比較的凡庸な成績に終わった(2000年の 年間興収ランキングで27位)。前作『グラディエーター』の「大ヒット作」や「傑作」というイメージは、あくまでも国外における大ヒット、そして翌年のアカデミー賞で作品賞と主演男優賞を含む5部門受賞という結果による「後付け」の影響が大きい。

 そう考えると、当時既に『L.A.コンフィデンシャル』(1997年)や『インサイダー』(1999年)といったハリウッド大作に主演していて知名度があったラッセル・クロウに対して、『aftersun/アフターサン』(2022年)や『異人たち』(2023年)のようなアートハウス系作品にしか出演経験のないポール・メスカルが主演に抜擢された今回の『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』は、それなりに健闘しているとも言える。日本の配給元もそれを承知で、だからこそ来日プロモーションに助演のデンゼル・ワシントンやコニー・ニールセンやフレッド・ヘッキンジャーも稼働させるなど尽力したのだろう。

 そもそも、今回のキャストのプロモーション来日も東京国際映画祭における特別招待作品としての上映との合わせ技で実現したもの。00年代までの洋画業界を知っている身からすると想像もできなかったことだが、近年、監督の来日こそまだそこそこあるものの、ハリウッド映画のプロモーションにおけるキャストの来日となると年に2、3作程度。『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』のような作品がある程度の結果を残さないと、キャストの来日プロモーションそのものがいつ絶滅してもおかしくない状況だ。

■公開情報
『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』
全国公開中
監督:リドリー・スコット
脚本:デヴィッド・スカルパ
キャラクター創造:デヴィッド・フランゾーニ
ストーリー:ピーター・クレイグ、デヴィッド・スカルパ
出演:ポール・メスカル、デンゼル・ワシントン、ペドロ・パスカル、コニー・ニールセン、ジョセフ・クイン、フレッド・ヘッキンジャー、リオル・ラズ、デレク・ジャコビ
配給:東和ピクチャーズ
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