『光る君へ』木村達成が体現する三条天皇の強さと苦しみ ゾッとする道長の言葉の数々も
第42回で道長は自分のことすら信じられなくなるほど憔悴しきっていたが、まひろ(吉高由里子)と語らう中で感情があふれだし、心が解放されたようだった。しかしそれで政の課題が解決したわけではない。三条天皇との対立は深まり、政を行う上で信頼を寄せる行成(渡辺大知)からは大宰府に赴任したいと言われてしまう。行成の申し出にはさすがに傷心しているようにも感じられた。だが、劇中、実資(秋山竜次)から諫められたように、道長の言動は思いのままの政を行おうとしているようにしか見えない。
ややゾッとしたのが、三条天皇に譲位を拒まれた後、敦成親王(石塚錬)のもとを訪れた道長の言葉だ。敦成親王とともに「偏つぎ」に興じたかと思えば、敦成親王から年を聞き出し「さきの帝がご即位なさったお年ですな……」と話し始める。「いずれ、帝となられる東宮様にございますゆえ」「帝たるべき道を学ばれるのは全く別のことでございますれば」と口にする道長の淡々とした口ぶりに心がざわついた。
第36回で彰子(見上愛)が皇子を産んだと知った際に見せた虚ろな目や、第37回でまひろに向かって言った「これからも中宮様と敦成親王様をよろしく頼む」「敦成親王様は次の東宮となられるお方ゆえ」という言葉が思い出される。第37回の台詞は言い方こそ何気なかったが、自分が思う政のために大きな影響力を持とうとしていることがうかがえ、ちょっとした怖さを覚えた。
実資から「幼い東宮を即位させ、政を思うがままになされようとしておることは誰の目にも明らか」と面と向かって諌められた道長なのだが、結局、自身の言動に無自覚なまま。嫡男・頼通(渡邊圭祐)の妻・隆姫(田中日奈子)に対して、「そなたにも是非、頼通の子を産んでもらいたい」と口にする場面もまた、ゾッとする。道長、倫子(黒木華)、頼通の3人で話す場面で、頼通を憤慨させる言葉をかけたのが倫子だが、結局のところ、一族を盤石にすることを最も信条としているのは道長だ。「思うがままの政」について実資から問われ、「民が幸せに暮らせる世を作ること」と答えたものの、道長の言動が父・兼家(段田安則)のやってきたことと大差ないように感じられるのは皮肉めいている。
■放送情報
『光る君へ』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/ 翌週土曜13:05〜再放送
NHK BS・BSP4Kにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送
出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、井浦新、高杉真宙、吉田羊、高畑充希、町田啓太、玉置玲央、板谷由夏、ファーストサマーウイカ、高杉真宙、秋山竜次、三浦翔平、渡辺大知、本郷奏多、ユースケ・サンタマリア、佐々木蔵之介、岸谷五朗、段田安則
作:大石静
音楽:冬野ユミ
語り:伊東敏恵アナウンサー
制作統括:内田ゆき、松園武大
プロデューサー:大越大士、高橋優香子
広報プロデューサー:川口俊介
演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろうほか
写真提供=NHK