『海に眠るダイヤモンド』“キラキラ”が詰まった杉咲花の美しさ 行尊の歌の巧みな引用も

 そう、鉄平は朝子にとって小さいころからキラキラをくれる人だった。百合子のようにペンダントを身につけることはできない朝子は、せめて海辺でキラキラと光る空き瓶を手に入れようとしていた。だが、足をすべらせて海に落下し、赤痢にかかってしまうという踏んだり蹴ったりな状況に。そんなとき鉄平が、“鞍馬天狗”と称して空き瓶を届けてくれた。そのとき朝子は鉄平に恋をしたのだろう。鉄平は空き瓶とともに恋というキラキラも朝子にくれたのだ。

 それ以来、ずっと彼女の心をなぐさめてきた、鉄平への恋心とその空き瓶を今も花瓶として使っている。朝子に想いを寄せている賢将(清水尋也)も、いつもお土産にガラス細工を買ってきているが、それももしかしたら朝子がキラキラとしたものが好きなのを感じ取っているからかもしれない。しかし、朝子にとっては“好きな”が詰まったこの空き瓶ほどキラキラしたものはないのだ。

 そして、現代を生きるいづみもまた花を愛でている。季節の移ろいを告げる花ばなを愛しそうに世話をしているのは、緑のなかった端島ではできなかったことを存分に楽しんでいるということなのか。また、どうやらいづみが経営している会社は庭の施工を行なう会社というではないか。玲央(神木隆之介/1人2役)を連れて行った庭には、1本の桜の木が植えられていた。それはまるであの中ノ島で見た桜を彷彿とさせる。

 加えて、家族とお金の問題を曇った表情で静観しているいづみの姿と、新しいテレビの購入を巡って言い争う両親を諌めようとした朝子もどこかリンクしているようにも見えた。だが、あの百人一首の歌を鉄平の兄・進平(斎藤工)と話していたのはリナだった。そして「さあ、一緒にこの会社を潰そうじゃないか」と会社に突撃する勇ましいいづみの様子は、どこか勝ち気な百合子を思い出させるから悩ましい。

 そもそも「いづみさんって、一体何者?」と問う玲央だって、おそらく源氏名であり、本性はわからない。正体不明な2人が、いづみの会社をなにゆえ潰そうとするのか。そして、このいづみが語る活況な端島も、いつか終わりが来るのだと思うと胸がざわざわとしてしかたない。すべての真相を早く知りたいと思いながらも、端島と現代がつながる“そのとき”が来るのが怖くもある。

参照
※ https://www.meihaku.jp/hyakunin-isshu-kajin/kajin-sakinodaisojo-gyoson/

■放送情報
日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』
TBS系にて、毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:神木隆之介、斎藤工、杉咲花、池田エライザ、清水尋也、中嶋朋子、山本未來、さだまさし、國村隼、土屋太鳳、沢村一樹、宮本信子、尾美としのり、美保純、酒向芳、宮崎吐夢、内藤秀一郎、西垣匠、豆原一成(JO1)、片岡凜
脚本:野木亜紀子
演出:塚原あゆ子、福田亮介、林啓史、府川亮介
プロデュース :新井順子、松本明子
スーパーバイザー:那須田淳、岡崎吉弘
音楽:佐藤直紀
編成:中井芳彦、後藤大希
製作:TBSスパークル、TBS
制作協力:NBC長崎放送
©TBSスパークル/TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/umininemuru_diamond_tbs/
公式X(旧Twitter):@umininemuru_tbs
公式Instagram:umininemuru_tbs
公式TikTok:@umininemuru_tbs

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