『進撃の巨人』に残る“最大の謎” 「いってらっしゃい」の意味を外国語訳と比べて考察
TVアニメ『進撃の巨人』が完結してから約1年。The Final Season 完結編の内容をブラッシュアップして145分の長編映画へと再構築した『劇場版「進撃の巨人」完結編 THE LAST ATTACK』が、11月8日より公開された。
この完結編において、もっとも重要な意味をもっているセリフの1つが、ミカサの口から発される「いってらっしゃい、エレン」という言葉だ。劇場版の公開にあわせて、あらためてこのセリフの意味について考察してみたい。
※本稿は『進撃の巨人』最終話までの内容を含みます。ネタバレにご注意ください。
まず、このセリフが発された場面についておさらいしておこう。『TVアニメ「進撃の巨人」The Final Season 完結編』では、後編にあたる第93話、“天と地の戦い”と呼ばれる最終決戦での出来事だ。
「地鳴らし」を発動させてパラディ島の外で暮らす人々を滅ぼそうとするエレンに対して、ミカサやアルミンたちは決死の抵抗を試みていた。最終的に「終尾の巨人」を止めることには成功したものの、エレンはふたたび巨大化して“世界の敵”として立ちはだかる。そして死闘の果てにミカサがエレンのもとに辿り着き、その首を切断すると「いってらっしゃい、エレン」と言い、そっと口づけを交わすのだった。
さらにこのセリフは、不可解なことに物語の冒頭とリンクしている。原作の第1話、エレンが眠りから覚めるシーンで、夢のなかのミカサにまったく同じ言葉を言われていたのだ。TVアニメの第1話では省略されたものの、第88話にてあらためてこのシーンを補完する描写が追加されていた。
これは過去と未来が一体化した「座標」を通じて、未来のエレンから幼少期のエレンに記憶が流れ込んできたことを示す描写だと思われるが、物語の始点と終点をつないで1つの円環にしたという意味で、作中屈指の重要シーンだと言えるだろう。
ではなぜそこで強調されたのが、「いってらっしゃい」というセリフだったのだろうか。ミカサはこの言葉にいかなる意味を込めたのだろうか。
幼少期エレンの背中を押すための言葉として
読者のあいだではさまざまな解釈が飛び交っているが、たとえば1つの説としては、将来“自由を求める戦い”に身を投じる幼少期エレンの背中を押すための言葉だった……というものがある。
しかしミカサの視点に立つと、「いってらっしゃい」というのは、あくまで永遠の眠りに就こうとしている目の前のエレンに対して発した言葉。幼少期のエレンへのメッセージとして捉えるのは、難しそうだ。ただしミカサ自身の意図から離れた部分で、「エレンにとって自分の背中を押す言葉になった」という側面はあるかもしれない。