北村有起哉、“不動の名脇役”としての存在感 朝ドラ『おむすび』で体現する“人生の線”

 放送中の朝ドラ『おむすび』(NHK総合)の北村有起哉がとにかくいい。彼が演じているのは、ヒロイン・米田結(橋本環奈)の父親だ。バイプレイヤーとして数多くの映画やドラマを支え、牽引してきた彼が、国民的ドラマの重要人物を演じ、作品の中心部からクオリティを底上げすることに貢献している。彼の一つひとつのパフォーマンスに魅せられては、お茶の間でウンウンうなずいている。これは私だけではないだろう。

 北村が演じる聖人は元理容師で、現在は福岡の糸島にて家族とともに農業に勤しんでいる。娘たちのことが心配でしょうがない父親であり、ときには言動が行きすぎてしまうことも多々。といっても、過保護などとは違う。聖人はとにかく真面目な性格の持ち主なのだ。だから彼とは対照的なタイプの父・永吉(松平健)と衝突することもしょっちゅう。物語の展開の盛り上がりにも大きく関わる役どころである。

 本作の公式ガイド『連続テレビ小説 おむすび Part1』(NHK出版)にて北村は、俳優業をはじめたばかりの頃に掲げた目標として、「朝ドラのヒロインの父親役を演じること」というものがあったことを明かしている。彼が朝ドラに参加するのは、『わろてんか』(2017年度後期)、『エール』(2020年度前期)に続いてこれで3度目。名脇役としてさまざまな作品に関わってきたが、長く険しい役者の道のスタートラインで思い描いた理想像を現実のものとするのは、やはり特別な感慨深さがあることと思う。お茶の間での認知度も跳ね上がっているのではないだろうか。

 同ガイドにて北村は、自身の演じる役どころについて、「聖人は、とにかく優しく、結に対しては異常なほど心配性。実際の僕はのんきで、子育てに関してものんびりしているので、父親とはそこまで娘を心配するものなのかと想像しながら演じています」と語っている。先述しているように、聖人の結に対する態度にはちょっと異常なものがある。ときおり唖然とさせられてきた視聴者も少なくないはず。しかし北村は「でも聖人が心配性なのには理由があって、なぜそうなってしまったかが今後描かれるので、丁寧に演じていきたいです」と言葉を続けている。彼の発言にある“なぜそうなってしまったか”を描いているのが、まさにいまだ。

関連記事