2024年秋ドラマは“女性の奮闘”を描いた作品に注目 『無能の鷹』など原作ものオススメ3選

2024年秋ドラマ“原作もの”オススメ3選

 「〇〇の秋」と聞いたら、なにを思い浮かべるだろうか。食欲の秋、スポーツの秋、読書の秋……。どれにしようか決めかねているならば“テレビドラマの秋”にしてみるのはどうだろう。なにしろこの秋から始まったテレビドラマは45本以上。興行収入50億円を突破した映画『ラストマイル』を手がけた脚本・野木亜紀子×監督・塚原あゆ子×プロデュース・新井順子の最新作『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)や、海外ドラマのように脚本開発チームを組んで制作した『3000万』(NHK総合)など、注目作が目白押しだ。

 今回はその中から、漫画や小説など原作つきのドラマをいくつか紹介する。中でも「社会に揉まれる女性の奮闘」を描いた作品として『無能の鷹』(テレビ朝日系)、『嘘解きレトリック』(フジテレビ系)、『若草物語―恋する姉妹と恋せぬ私―』(日本テレビ系)の3つは特に気になっている作品だ。

 まずは、金曜深夜にゆるっと放送されている脱力系お仕事ドラマ『無能の鷹』から。主人公の鷹野ツメ子(菜々緒)は、新入社員らしからぬ圧倒的な“デキる人オーラ”を放ちながらも、実は書類のコピーすらままならず、社内ニートと化している。

『無能の鷹』©︎テレビ朝日

 大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合)や朝ドラ『虎に翼』(NHK総合)で好演した俳優たちが、息もつかせぬままに“転生”している『無能の鷹』。頼りなさそうだが仕事はデキる鶸田役に塩野瑛久、無能な鷹野を根気強く指導する上司・鳩山役に井浦新、オレンジの髪がトレードマークのエンジニア・鵙尾役に土居志央梨、昭和気質な部長・朱雀役に高橋克実が、前回とは180度違う役柄でインパクトを残している。さらに、現在放送中の朝ドラ『おむすび』(NHK総合)を手がける根本ノンジが脚本を担当。NHKドラマ好きにもオススメしたい1本だ。

 個性豊かなキャストの中でひときわ異彩を放つのは、なんといっても鷹野役の菜々緒である。「何がわからないのか、わからない」や「もえぴ(燃費)」など、圧倒的に有能な役柄が多かった菜々緒から飛び出す“鷹野語録”の破壊力は抜群。原作漫画を読んでいた人にとっては“待望”の、テレビドラマから今作を知った人にとっては“納得”の鷹野像に仕上がった。すっかり会社のお荷物になってしまった鷹野を主人公に据えながらも、今作の端々には、働く人へのエールを感じる。無能認定されても一向にめげない鷹野を横目に眺めながら、1週間乗り切った自分をちょっと誇らしく思えるような、新感覚のお仕事ドラマになりそうだ。

『無能の鷹』©︎テレビ朝日

 今期の月9枠『嘘解きレトリック』も、累計発行部数100万部を突破した人気コミックを実写化した作品である。昭和初期の日本を舞台に、鋭い観察眼を持った貧乏探偵・左右馬(鈴鹿央士)と、他人の嘘を聞き分ける能力を持った鹿乃子(松本穂香)が奇々怪界な事件に挑む。ともに看板を担う鈴鹿と松本はどちらも月9初主演だが(鈴鹿は月9初出演にして初主演)、早くも代表作になりそうな予感。『ガリレオ』シリーズの演出・西谷弘×プロデュース・鈴木吉弘タッグが集結し、原作の世界観を忠実に再現したレトロな映像が作品を一層引き立てている。

『嘘解きレトリック』©︎フジテレビ

 第3話では、原作の第1巻に収録されている「松葉牡丹の君」エピソードが描かれた。嘘がわかってしまう鹿乃子の能力を「受け入れる」と言った左右馬のシーンは原作通りだが、「月が綺麗ですね」はドラマオリジナル。その言葉に隠れたもう一つの意味は、わざわざ書かずともお察しだろう。きっと鹿乃子のことだから、純粋に月の奇麗さに心打たれたのだとは思うが、秘密を共有できる唯一の“味方”を得た安心感が、彼女の心にじんわりと広がっていくのを感じた。

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