『おむすび』が伝える“エンターテインメントの力” “結”橋本環奈が得たギャルのマインド
第4週目にして、一気に物語が進展しつつある朝ドラ『おむすび』(NHK総合)。橋本環奈が主演を務める本作は、平成元年生まれのヒロインが栄養士として、人の心と未来を結んでいく青春模様を描く作品である。
物語の舞台は平成中期の福岡県糸島ーー。第4週目の「うちとお姉ちゃん」は、“エンターテインメントの力”というものが感じられる週だった。その理由を記していきたい。
第4週で描かれた重要なトピックは、ヒロイン・米田結(橋本環奈)とその姉の歩(仲里依紗)の過去と、糸島で行われるフェスティバルにて結が「博多ギャル連合(通称:ハギャレン)」のメンバーたちと本格的な“ギャルデビュー”を果たしたことだ。ここでは後者について言及しようと思う。
第3週目の「夢って何なん?」では、結が周囲の人々との交流の中で、自身の夢について、ひいては“これから”について思いを馳せる様子を描いていた。そこで明らかになったのが、「ハギャレン」の面々が“いま”だけを大切にしているのではなく、それぞれが“これから”について考えているということ。そう、一人ひとりに夢があるのだ。いっぽうの結は、家業が農家であることを理由に、彼女自身もその道を進むことを当たり前に自らに課している。
家業を守り、次代につないでいくのはたしかに大切なことだ。けれどもそこでの結の主体性は失われている。彼女の人生の主人公は、いったい誰なのか。もちろん、結にほかならない。であれば、どう生きていけばいいのか。これはこの後の展開で丹念に描かれていくのだろう。まずは“いま”を大切に生きること。その積み重ねが、やがて“これから”にもつながっていくはずなのである。
目下の目標は「糸島フェスティバル」のステージに立つこと。そうして彼女は「ハギャレン」のメンバーたちとパラパラの練習に励んできた。そんな活動を姉の歩に否定されようとも、である。
しかしながら当然、練習を重ねたからといって本番でうまくいくとはかぎらない。ステージに立つと目の前には観客の存在があり、多くの視線にさらされることになる。それによって特別な緊張感も生まれるだろう。自意識が活発に動き出し、主観的な視点と客観的な視点がごちゃごちゃになってくる。するとどうなるか。いくら練習どおりのことをやろうとしても、自分のパフォーマンスに対する誤認が自らを縛り、やがてはのびのびと踊ることができなくなる。結はこれに陥っていたのではないだろうか。
たしかに、「糸島フェスティバル」における観客たちの態度は冷ややかだった。ステージ上のギャルに対する彼ら彼女らの視線にはあからさまな難色が宿っていて、いつもどおりのパフォーマンスが発揮できなくとも不思議ではない。けれども結だって、当初は「ハギャレン」の面々に対して偏見を抱いていたではないか。その偏った見方を改めさせたのは、ほかではない「ハギャレン」の人々だったはず。“これから”も大切だが、まずはパラパラを踊っている“いま”を大切に、一生懸命になればいい。結果は自ずとついてくるはずなのだから。