アニメは“演出面”が評価される時代に? 『マケイン』『義妹生活』に感じるリアリティ

 2024年の夏アニメは、ライトノベル原作のアニメが高い人気を獲得した。国内で特に話題となったのは、『【推しの子】』第2期を中心に『時々ロシア語でボソッとデレる隣の席のアーリャさん』、『負けヒロインが多すぎる!』などだ。しかし、海外に目を向けると国内とはやや異なり『負けヒロインが多すぎる!』と『義妹生活』がTOPを争うほどの人気を見せた。

 『負けヒロインが多すぎる!』と『義妹生活』に共通するのは、他作品にない独自の実写的な演出が光る点である。ヒロインの描かれ方やテンポ感は正反対ではあるが、どちらも“画でみせる演出”が取られており、その2作が国内外で高評価を得ているのは興味深い。本記事ではこの2作の演出や共通点を紹介しつつ、近年のアニメにおける評価や描き方の変化を分析していく。

『負けヒロインが多すぎる!』のリアリティラインを追求した演出

 『負けヒロインが多すぎる!』で特徴的なのは、説明セリフがほとんどなく1カットごとの情報量で見せている点にある。説明セリフが多用されるとどうしても冗長になってしまうが、『負けヒロインが多すぎる!』はそれがない分、テンポよく話が進んでいく。

 第1話では、ヒロインの八奈見杏奈たちが階段を降りてから、ぐるっと廊下にカメラが向くカットがある。実写作品ではよく見かけるカメラワークではあるが、アニメで用いるには、その分の作画の手間がかかってしまう。

TVアニメ「負けヒロインが多すぎる!」メインPV【7月13日(土) 24:30~ 放送/配信開始】

 さらにキャラクターごとに影の付け方に違いがあるのも面白い。本作では、屋内のシーンでも明るい場所と暗い場所、日向と部室とで影の明るさや色を変えている。ロケハンもかなりこだわり抜かれており、アニメで描かれる愛知県豊橋市の風景は実際の風景と酷似している。また第9話では「姫宮華恋バストコーディネーター」というスタッフが存在し、胸の動きまでこだわり抜いて描かれていた(※)

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