ペドロ・アルモドバルが金獅子賞、『ジョーカー2』賛否両論 第81回ヴェネチア映画祭を総括

 そしてもう一本は、銀獅子賞(監督賞)に輝いたブラディ・コーベットの『The Brutalist(原題)』というイギリス映画。エイドリアン・ブロディとフェリシティ・ジョーンズ、ガイ・ピアースの共演で、ホロコーストを生き延びたハンガリー生まれのユダヤ人建築家の30年を描く3時間半にも及ぶ巨編だ。ヴェネチアでの上映後の批評家の反応を見るに、絶賛評一色に染まっており、公式賞である銀獅子賞の他にも国立批評家連盟賞など4つの独立賞を受賞。5冠を達成している。

銀獅子賞(監督賞)に輝いたブラディ・コーベット(写真=REX/アフロ)

 この『The Brutalist』は北米ではA24の配給で公開されることが決定しており、今回のコンペのラインナップではルカ・グァダニーノの『Queer(原題)』や、ニコール・キッドマンが女優賞を獲得した『Babygirl(原題)』もA24の北米配給となる。これらヴェネチア参加作品以外にも賞レースの有力と目されている作品があるA24は、どの作品をプッシュしていくのか。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が席巻した年のようが快進撃がまた起こるかもしれない。

北野武監督(写真=REX/アフロ)

 ところで日本からは、今年はコンペの出品は一本もなく。それでもアウト・オブ・コンペティション部門に北野武の『Broken Rage』と、黒沢清の『Cloud クラウド』が出品されていた。前者はPrime Videoで世界配信される実験的な中編作品であり、後者は菅田将暉をはじめとした黒沢組初参加の若手キャストが多数出演した作品であり、しかもアカデミー賞国際長編映画賞の日本代表作品にも選ばれている。ヴェネチアで受賞経験のある2人の“巨匠”の作品がラインナップされ、またオリゾンティ部門には空音央の長編劇映画デビュー作『Happyend』もあり、大々的ではないにしろ日本勢はたしかに存在感を示したといえよう。

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