伊藤沙莉を支えた魔女5の“チーム力” 『虎に翼』が描き出す、彼女たちの“等身大の姿”
半年という長い時間をかけてヒロイン・寅子(伊藤沙莉)の成長を描いてきた朝ドラ『虎に翼』(NHK総合)も、いよいよラストスパート。男性ばかりの法曹の世界で奮闘する寅子の姿は、私たちの現実社会においても話題の中心になることが多かった。いわゆる“ロス”が起こるのは間違いないだろう。
しかしご存知のとおり、本作が描いてきたのは寅子の人生だけではない。このドラマが終わったとき、私たちの多くが「魔女5」の面々に思いを馳せることになるのではないだろうか。
「魔女5」とは、かつて寅子が通っていた明律大学において、彼女と志を同じくした桜川涼子(桜井ユキ)、山田よね(土居志央梨)、崔香淑/汐見香子(ハ・ヨンス)、大庭(竹原)梅子(平岩紙)らに対して男子学生が用いていた呼称である。もちろん、揶揄する意味合いでだ。
しかし現代の感覚でいえば「魔女5」だなんて、なかなかセンスがある呼び名にも思える。彼女たちのひたむきな姿に対し、まるで魔法をかけられたように見入ったのは私だけではないだろう。当然ながらそこには、男社会の中で切磋琢磨し合う女性たちの大変な努力があったわけだが。
ここでは、かつての涼子の付き人にして現在は親友である玉(羽瀬川なぎ)も「魔女5」の一員として捉えたい。なぜなら彼女もまた、女子部の面々にとってなくてはならない存在だったからだ。
彼女たちの素晴らしさの最大のポイントは、それぞれの個性がきちんと立っていながら、ひとつの“チーム”として成立していたところにある。桜井ユキが表現する涼子の品格、羽瀬川なぎが示す玉のたくましさ、土居志央梨の言動のすべてに宿るよねのクールな知性、ハ・ヨンスが体現した香子のひたむきさ、平岩紙が持ち込んだ梅子のおおらかさーー。一人ひとりの俳優による正確なポジショニングと、そこで展開する手堅いユニークな演技の数々は、『虎に翼』の世界をより豊かなものへと広げるいっぽうで、リーダーである“寅子=伊藤沙莉”の個性をより際立たせるものであり続けた。
一人ひとりの登場人物の存在と寅子の人生は、切っても切り離せないもの。つまり、彼女たちが各々の人生を展開させながら、いや、彼女らが各々の人生を力強く生きてみせることで、結果として寅子の人生にスポットを当てていたわけだ。脚本上の作劇や演出に拠るところも大きいに違いないが、これらを自身の肉体でどう表現するのかは、桜井や土居たち一人ひとりにかかっている。これを誰もがベストなかたちで実現させてきたわけだ。