『海のはじまり』夏と海の間に生まれた“隔たり” 今田美桜のサプライズ出演で“W夜々”も
「ママいないのって聞かれた。なんて答えればいい?」
人生において、別れは避けられない。恋人や友人との別れ、そして死別。そんな時、私たちは思い出をどう扱うべきか迷う。新たな一歩を踏み出すために手放す人もいれば、大切な記憶として大事に保管する人もいる。たとえそれが、ぬいぐるみひとつだったとしても。『海のはじまり』(フジテレビ系)第11話が私たちに教えてくれたのは、その選択が必ずしも「正解」や「間違い」ではないということだ。
いよいよ夏(目黒蓮)は、本格的に海(泉谷星奈)と暮らすためにアパートの部屋を片付ける。一方、小学校のクラスでは海のお別れの会が開かれ、海は担任の乃木夏美(山谷花純)とクラスメイトたちから拍手で見送られる。帰り際、夏美と2人になった海は、かつて母・水季(古川琴音)が自分のことを何か言っていたかと聞く。すると夏美は「いつも、海ちゃんが一番大切って言ってた」と伝え、海はにっこりと笑う。それはもちろん、夏にとっても。これから始まる生活はきっと楽しいものになるはずだった。
しかし、現実はそううまくいかない。海と夏の間には、目に見えない微妙な隔たりが徐々に生まれ始めていた。それは日常生活の習慣の違いや経済的な問題といった表面的なものではない、心のもっと深いところでの「亡くなった人」との向き合い方だった。
海にとって、至る所に母の思い出が眠る土地を離れることは、想像以上に辛い経験だったに違いない。それに津野(池松壮亮)や朱音(大竹しのぶ)といった、母のことを知る人々に囲まれた環境では、水季の存在を身近に感じることができていたのだろう。
しかし、夏は水季と別れてから7年もの歳月を経ていた。当然夏は、「海と過ごしていた水季」を知らないのである。2人の喪失感に決定的な違いをもたらしていたのが、この時間の隔たりだ。水季の死は、夏にとっても確かに悲しみをもたらしたはずだが、それは日常から突然姿を消した人の不在を実感する重みと“同じ”とは言えない。ある意味では、夏が「水季の死を乗り越えていること」が海の孤独感をさらに深めていくという、複雑な感情の連鎖が静かに始まっていた。