『虎に翼』で朝ドラデビュー 猪爪直人役・青山凌大が明かす、俳優としての意識の変化

いろいろな出会いによって“人を信じられる”ようになった

――この作品を経て、ご自身の中で何か変化はありましたか?

青山:「明るくなったね」とよく言われます。(伊藤)沙莉さんも三山(凌輝)さんもすごく明るくて、いい意味で遠慮がない方々だったので、「そうやって向き合ってもらった側は、こんなにも嬉しいんだ」と。身を以て喜びを感じる期間だったので、心境の変化はすごくありました。

――それはガラッと変わりますよね。必然的に、自分自身も相手に見せていくことになりますから。

青山:すぐにできるわけではないですけど、すごく前向きになったと思います。次の作品への心持ちも変わりますし、本当に成長と感謝しかない経験でした。

――ここからは青山さんご自身のお話も伺いたいんですが、小さな頃はどんなお子さんだったのでしょうか?

青山:父方の祖父母からは「変な子だったよね」と言われるんですけど、そのエピソードが思い出せなかったので母親に電話しました(笑)。そうしたら、「小さい頃に徒競走を本気でやっているのを見たことがない。みんながゴールするのを見てからゴールする子だった」と言われて。どこに行っても、ぐずることなくニコニコしていたみたいです。弟が生まれたときには、“望んで兄になったわけではないから”という理由で母は「お兄ちゃんでしょ!」と言わないようにしていたらしいんですが、自分からちゃんとお兄ちゃんでいようとしたり、とにかくいい子だったと言われました。

――「リアル直人だ!」と思ってしまいました(笑)。そんなお母様の推薦がきっかけで、ジュノン・スーパーボーイ・コンテストに応募されたんですよね?

青山:僕、母親に薦められてから2年間、断っていたんですよ。でも、「毎年言われるのもなぁ」と思って、1回だけという約束で応募しました。もともと僕の父が自営業をしていて、子どもの頃から「お父さんみたいになるのが夢」と言っていたので、この仕事を始めなければ父親のお店を継いでいたんだと思います。

――前のめりに「役者をやりたい」という気持ちではなかったと。

青山:妹も芸能をやっているので、“芸能=妹がやるもの”だと思っていて、興味がなかったんですよね。お芝居のレッスンは楽しかったけれど、いざ現実を見ると楽しいだけではないので、そこに悩むこともあって。「ちゃんとこの仕事と向き合おう」と思えたのは、本当に最近かもしれないです。『虎に翼』への出演は、間違いなく大きなきっかけになりました。

――「楽しいだけじゃない」という壁をどう乗り越えたのでしょうか。

青山:僕は、昔から「波風の立たない穏やかな人生がいいな」と思って生きてきたんです。でも、この世界は「これでもか!」というくらいに波風が立ちまくるじゃないですか(笑)。人から注目されるのも得意じゃないし、干渉されるのも苦手だし。でも、こんな僕でも誰かに何かを与えられる、ということも知りました。今でも乗り越えたわけではないけれど、お芝居はすごく素晴らしいものだと思うので、「それが好きだ」という気持ちでやっていけたらいいのかなと思っています。

――お芝居自体は、最初から楽しめたんですか?

青山:そうですね。僕は食に興味がない分、知識欲があるみたいなんです。お芝居に関しても、“知らないことを知る”という意味で楽しく感じていた部分がありました。役の気持ちを想像するのも好きですし、たとえば『虎に翼』の現場では「沙莉さんは今どんなことを考えて演じているんだろう」「どんな経験をしてきたら、こういうお芝居ができるようになるんだろう」と考えるのも楽しくて。演じること自体もそうですけど、自分の知らないことを知っていくのが楽しいな、とも思います。

――これまでお話を聞いてきて、青山さんは“人”がお好きなのかなと感じました。

青山:最近、僕も気づきました(笑)。恋愛的な意味ではなくて、惚れっぽいんですよね。会った人みんなを好きになるし、みんなが幸せであればいいなと思います。この仕事を始めて4年目ですけど、嫌いな人に出会ったことがなくて。みんないい人だし、みんないいところがある。だからこそ、みなさんにいろいろと聞きたい気持ちはあるけど、その人にはその人が大切にしている人がいるはずだから、僕は遠くから幸せそうにしているのを見られればいいな、とも思ったりします(笑)。

――ふだんから、人の悪いところではなくいいところを見ようとしているんですか?

青山:どうなんですかね……でも、それだと僕が“いい人”みたいに見えてしまうので、そんなことはないです(笑)。

――(笑)。これまで活動されてきて、印象的だった先輩からの言葉はありますか?

青山:事務所の先輩の新原泰佑くんから、「もうちょっと人を信じてみてもいいんじゃない?」と言ってもらったことがあります。

――信じるというのは?

青山:僕は学生時代に人間関係でちょっと辛いことがあって、自分と向き合う必要があったというか。なかなか人を信じられない時期もあったので、事務所に入った頃、マネージャーさんに「なんで僕に対してここまでできるんですか?」と聞いてしまったこともありました。「会ったばかりで僕がどんな人かもわからないのに、なんでそこまで真剣にできるんですか?」って。

――マネージャーさんはなんと?

青山:「人生背負ってるから」と言われました。カッコいいなと思いましたし、僕自身、マネージャーさんの人生を背負っていかなきゃいけないんだと。この仕事を通じて人のすごさや可能性に気づくことができましたし、いろいろな出会いによって“人を信じられるようになったこと”は、自分の中で大きな変化だと思います。

――素敵なお話をありがとうございます。これからどんな役者道を歩んで、どういう役者になっていきたいですか?

青山:『虎に翼』で先輩方のお芝居を間近で見て、「こんな表現ができるようになりたい」という目標が一つできました。あとは、僕自身にも辛い時期があったので、みなさんに寄り添えたらいいなと思います。僕は人と関わるのが苦手だけど、僕の好きなお芝居を通じて、少しでも救われる方がいてくれたら嬉しいです。

――ちなみに、どんな役をやってみたいですか?

青山:この間、FODの『REAL恋愛殺人捜査班』で人を刺す役をやったんですが、ああいうダークな役をもっとやりたいです(笑)。

――『虎に翼』とは真逆ですね(笑)。でも、『イップス』(フジテレビ系)の役もまったく違いましたし、直人役の青山さんだと気づかない人もいるだろうなと思います。

青山:でも、それが一番ですよね。“僕”としてではなくて、“役”として見てもらえる。そういうお芝居ができたらいいなと思います。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、岡田将生、石田ゆり子、森田望智、土居志央梨、ハ・ヨンス、戸塚純貴、高橋努、平埜生成、塚地武雅、趙珉和、三山凌輝、川床明日香、円井わん、青山凌大、今井悠貴、菊池和澄、井上祐貴、尾碕真花、池田朱那、平田満、余貴美子、沢村一樹、滝藤賢一、松山ケンイチ
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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