『虎に翼』寅子は家裁の“母”と呼ぶべき存在に 香子の娘も逮捕された少年事件への眼差し

 国側の勝訴で幕を閉じた原爆裁判。どうしても無力さを拭いきれぬ寅子(伊藤沙莉)に、航一(岡田将生)は「上げた声は、判例は決して消えない」と語りかける。自身のかつての言葉が寅子を再び前へ向かわせた。

 そして、その通りに広島・長崎への原爆投下を国際法に違反するとした判決は世界で注目を集め、被曝者への国の支援を法制化する根拠の一つとなっていく。真摯なジャーナリズムでこの裁判を世に広めた竹中(高橋努)の功績も大きい。

 そんな竹中の「またどこかでな、佐田判事」という言葉がどこか寂しく響いた『虎に翼』(NHK総合)第116話。歳を重ねるたびに「また」という約束が果たされないことも増え、2年後には百合(余貴美子)が家族に見守られながらこの世を去る。晩年は認知症で表情が乏しくなっていた百合だが、最後に以前のような優しい笑顔を見ることができて良かった。

 消えていく命もあれば、生まれる命もある。朋一(井上祐貴)が子宝に恵まれ、寅子にも孫ができた。直人(青山凌大)も結婚し、お正月に猪爪家と星家が集合するとかなりの大人数だ。それぞれ状況は変わっているが、特に興味深いのが優未。毎田暖乃からバトンを引き継いだ川床明日香が演じる優未はすっかり大人の女性となり、現在は大学院で寄生虫の研究をしているという。何をきっかけに寄生虫に興味を持ったのかが気になるところだ。

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