『新宿野戦病院』宮藤官九郎が描いた完璧なエピソード ヨウコの執念と勇太の後悔と苦悩

 2001年9月1日に起きた歌舞伎町ビル火災。2019年7月18日に起きた京都アニメーション放火殺人。このふたつの事件が今回のエピソードの背景にあることを想起させる後半の展開には、“命だけは平等”であるという医療従事者の執念と、中途半端な介入しかできないことが大きな事態を引き起こすことになってしまった勇太の後悔と苦悩を物語る。それでも疲弊しきったまごころの面々の前に、コンカフェで行方不明になったと思われていた白木の夫が無事で現れる点、最も甚大な被害を受けた場所にいたカエデらが無事であったことから、おそらくは死者が出ていないと思われる点にささやかな希望が見出される。

 そして、まごころの屋上から見えるビルの変わり果てた姿。混沌の果てに起きてしまう暴力が、多くの人に与える無力感。その絶望以外のなにものでもない光景で幕を下ろすラストショットに重ねられるいつもと同じナレーションは、いつもと違うもののようにも聞こえる。エンドクレジットに入る一瞬の刹那も含め、これは1時間枠(正確には44分33秒)の作品として完璧としか言いようがない。

■放送情報
『新宿野戦病院』
フジテレビ系にて、毎週水曜 22:00~22:54放送
出演:小池栄子、仲野太賀、橋本愛、平岩紙、岡部たかし、馬場徹(ドランクドラゴン)、塚地武雅、中井千聖、濱田岳、石川萌香、萩原護、余貴美子、高畑淳子、生瀬勝久、柄本明ほか
脚本:宮藤官九郎
プロデュース:野田悠介
演出:河毛俊作、澤田鎌作、清矢明子
制作:フジテレビ ドラマ・映画制作部
制作著作:フジテレビジョン
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/shinjuku-yasen/
公式X(旧Twitter):@shinjyuku_yasen
公式Instagram:@shinjyuku_yasen
公式TikTok:@shinjyuku_yasen

関連記事