藤吉夏鈴×髙石あかりのバディが最高! 『新米記者トロッ子』と重なるアメリカ大統領選

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、大学時代に1カ月間だけ新聞部員だった花沢が『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』をプッシュします。

『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』

 本作は、制作の経緯からしてすでにワクワクさせてくれる作品でした。まず、原案にあたる企画書は、日本大学藝術学部の映画学科に在籍していた宮川彰太郎が、授業の一環として書いたもの。当時世間を賑わせていた母校の悪質タックル問題に着想を受け、温めていた企画が、『アルプススタンドのはしの方』(2020年)のプロデューサー・直井卓俊の目に留まり、映画化されることになったのです。

 しかも、監督を務めるのは、『殺さない彼と死なない彼女』(2019年)、『恋は光』(2022年)など青春映画の名手として知られる小林啓一監督。主演は、『作りたい女と食べたい女』(NHK総合)の南雲さん役がハマり役だった櫻坂46の藤吉夏鈴。座組からして良い予感しかしません。

 場面は、文学オタクの高校1年生・所結衣(藤吉夏鈴)が、文芸部の入部テストを受けるシーンから始まります。試験用紙に文学への溢れる愛をぶつける所ですが、突然教室に入ってきたドローンが頭にぶつかり、試験をやむなく離脱。憧れの文芸部入部の道は絶たれてしまいます。同校に在籍する作家・緑町このはに会うことが夢だった所は落ち込みますが、文芸部の部長・西園寺茉莉(久間田琳加)によると、実はこのはの正体は誰も知らないという。

 学園非公認の新聞部だけがその正体を知っていると部長に唆された所は、なぜかスパイとして新聞部に潜入することに。トロッコ(=新人記者)になった所は、変わり者の部長・杉原かさね(髙石あかり)にしごかれながら、このはの情報を集めようと奮闘します。

 映像は小林監督が手がけているだけあって、10代の若者の心情が繊細かつ的確に表現されており、木漏れ日や川の水面に反射する陽の光など、青春を象徴するような一瞬のきらめきが多用されているのが印象的でした。

 また、なんといってもキャスティングが最高です。主演の藤吉夏鈴と部長役の髙石あかりは2人ともダウナー系で、「わかる。わかるけど、ヒロインの趣味偏りすぎじゃない?」とも思いました。しかし、同じ“低体温”な2人でも、藤吉はみんなが構いたくなる、子犬のような瞳をしているのに対し、髙石は『ベイビーわるきゅーれ』でも殺し屋役がハマっていたように、反骨心が覗くギラギラした表情が似合うのです。

 そんな2人を囲むサブキャストにも、お淑やかそうで圧の強い文芸部部長役・久間田琳加や、アクの強い新聞部部長に振り回される苦労人な副部長役・恩田春菜など、ネクストブレイク候補が揃っています。

 新聞部と敵対する理事長を演じるのは、昨年『大奥』(NHK総合)での怪演が話題になった髙嶋政宏。1人だけ『半沢直樹』(TBS系)から飛び出してきたのかと思うほど、徹底した悪役っぷりを見せる髙嶋の演技から目が離せません。

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