『西園寺さんは家事をしない』突然浮上した三角関係 津田健次郎の巧みな“ギャップ”が光る

「偽家族終わるのやーだ。西園寺さんいなくなるのやーだ」

 誕生日会で突然「西園寺さん、パパのこと好きにならないで」と泣き出したルカ(倉田瑛茉)の真意が明かされた『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)第5話冒頭。

 突然母親を亡くしたところから愛情いっぱいの誕生日会を開けるまでになった偽家族は、ルカにとっても今やなくてはならない拠り所で、その継続のために恋心は邪魔になることがどうやら4歳児にも本能的にわかるようだ。

 「私はパパのこと好きにならない。だから偽家族はずっと続く」とルカに約束した通り、楠見俊直(松村北斗/SixTONES)へのほのかな恋心を駆逐するためにマッチングアプリに登録し、“上書き彼氏”を作ろうとする西園寺一妃(松本若菜)。西園寺さんは相変わらずいつだって一生懸命だ。

 しかしマッチングした相手と出会っても、どうしたって楠見とルカとの日常の一コマが思い出されて集中力が途切れてしまう。離れていたって自分の頭によぎる大切な存在がいるなんて本当に素敵なことだが、その大切な人との関係性を守るために“上書き彼氏”を作らねばならないなんて、なかなかに皮肉なことだ。

 ただこの“上書き彼氏”作戦が、西園寺さん本人よりもその周囲の想いを突き動かし固めていく。理由はどうあれ西園寺さんが“彼氏募集中”と知ったカズト横井(津田健次郎)は意を決して、彼女を食事に誘い出す。

 料理系YouTuberになったのは西園寺さんがかけてくれた言葉がきっかけだと話し、「あなたの言葉があったから僕は今ちゃんと生きてます」と真正面から伝えた。告白以上の言葉だが、きっと西園寺さんは彼女が意識せずとも多くの人の背中を押し、救ってきたのだろうなと想像できる。

 横井は、演じる津田健次郎持ち前の艶のある声質とサングラスを掛けたダンディーな佇まいに反して、癖になるリズムのテーマソングに合わせて中毒性のあるダンスを披露するギャップが魅力だ。それでいてかわいげまで持ち合わせているのだから、子どもからの人気が高いことも頷ける。今や人気YouTuberの名を欲しいままにしている横井だが、実は他人と関わるのは苦手で、新しいことには二の足を踏んでしまう絵に描いたような冴えないおじさんだとこぼす。だが、カメラの前の“カズト横井”と一人の男性としての横井の両面を、津田は巧みに地続きに見せながら演じてくれた。

 ただそんな実直な横井だからこそ、西園寺さんも“上書き彼氏”候補にと割り切ってしまえない。横井からの一世一代の告白には、“偽家族”継続のためという自分勝手な事情で彼からの想いには向き合えないと思いとどまらせる切実さが充満していた。

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