『マウンテンドクター』熊エンカが引き起こした悲劇 “歩”杉野遥亮を襲った最悪の結末

 山の事故で恐れるべきは二次災害だ。宇田の身に起きた悲劇は、潜在的なリスクが無理をしたことで顕在化したと説明できる。ドラマ的には、怪我をした麻里子が亡き妻と二重写しになって、宇田の中でなんとしても助けなくてはという思いが生まれたのだろう。歩の制止を振り切って下山したまではよかったが、最悪の結末となり、歩自身も誤診が発覚して絶望のどん底に突き落とされる。

 山に私たちはある種の理想や希望を投影する。他方で、そこには死と隣り合わせの現実がある。連日報じられる遭難者のニュースを目にすると時々現実感を失いそうになるが、理想と現実の落差、明暗のコントラストは登山の厳しさを伝えている。

 だからこそと言うべきか、山を舞台にした『マウンテンドクター』は登場人物の背景を丹念に描いており、人生劇場あるいは人間山脈のような感慨を抱かせる。兄を失った歩は父の市朗(遠山俊也)が認知症を患っていた。江森(大森南朋)と玲(宮澤エマ)は、美鈴(中越典子)を山で失うという共通の傷を負っている。

 歩の幼なじみでMMTメンバーの典子(岡崎紗絵)が家族に言えない秘密を抱えていること。いつも変わらない笑顔で迎える真吾(向井康二)には、別れた妻と遠くで暮らす息子がいて、一人でいる時の真吾は寂しそうな表情を浮かべる。山に登らない人も、山を通じてそれぞれの人生が浮かび上がってくることは、本作の醍醐味と言えるだろう。

■放送情報
『マウンテンドクター』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00〜放送
出演:杉野遥亮、岡崎紗絵、宮澤エマ、向井康二、八嶋智人、檀れい、大森南朋
脚本:高橋悠也
演出:国本雅広、高橋貴司、保坂昭一
プロデューサー:近藤匡(カンテレ)、大城哲也(ジニアス)
音楽:林ゆうき
主題歌:Official髭男dism「Sharon」(IRORI Records/PONY CANYON INC.)
制作協力:ジニアス
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/mountaindoctor/
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/_mountaindoctor
公式Instagram:https://www.instagram.com/_mountaindoctor/
公式Tiktok:https://www.tiktok.com/@_mountaindoctor

関連記事