『南くんが恋人!?』と『南くんの恋人』(94年版)を比較検証 男女逆転以上の仕掛けの予感
一方が小さくなることで庇護する強者と庇護される弱者という男女関係が極端な型で現れるのが『南くん』シリーズの面白さだが、ファンタジーとしてその関係を楽しいものとして描きながらも、不協和音の影がチラチラと見え隠れするのが、『南くんが恋人!?』の面白さだ。
また、94年版でちよみ役を演じた高橋由美子を筆頭に『南くんの恋人』は、小さくなるヒロインを、その時代の若手アイドル女優が演じてきた。身体が小さいため性行為ができない恋人のちよみと南の関係が、女性アイドルと男性アイドルオタクの擬似恋愛、もしくは、触れることのできない虚構(フィクション)と生身の人間(現実)の比喩に見えるのも、ドラマシリーズの隠れた魅力だろう。
対して、「男性アイドルと女性アイドルオタク」の比喩に見えるのが今回の『南くんが恋人!?』だ。劇中には男性アイドルのアクリルスタンドで楽しんでいる女性が登場するため、作り手も作品の構造に自覚的なのだろう。
その意味でアイドルドラマの原点にして頂点と言える『南くん』シリーズだが、94年版を丁寧になぞっているからこそ、当時とは違う2024年版ならではの展開に後半は大きく切り変わるのではないかと感じている。
中でも注目したいのが堀切家の描かれ方だ。「実は私の家族は複雑だ」とちよみは第1話で言う。堀切家は母親が再婚したことで人間関係がごちゃごちゃとしている。しかし、それでも彼らは家族として仲睦まじく暮らしている。
この複雑な家族関係の描き方に、初めは戸惑ったが、思えば、複雑な人間関係を許容した上で楽しい日常を描き切る剛腕こそが『ちゅらさん』以降、確立した岡田惠和の最大の武器である。
小さくなった恋人は、94年版では様々な理由で隠さねばならないか弱い存在だった。だが、2024年版の堀切家を見ていると、小さくなった南を新しい家族として平然と受け入れてしまうのではないかと思うのだが、果たしてどうなるのか?
ファンタジーだからこそできる大胆な着地に期待したい。
■放送情報
『南くんが恋人!?』
テレビ朝日系にて、毎週火曜21:00〜21:54放送
出演:飯沼愛、八木勇征(FANTASTICS)、武田真治、加賀まりこ、室井滋、光石研、沢村一樹、木村佳乃
原案:内田春菊『南くんの恋人』(青林工藝舎刊)、『南くんは恋人』(ぶんか社)
脚本:岡田惠和
監督:宝来忠昭(テレビ朝日)、小松隆志(テレビ朝日)ほか
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
ゼネラルプロデューサー:服部宣之(テレビ朝日)
プロデューサー:神田エミイ亜希子(テレビ朝日)、布施等(MMJ)、村山太郎(MMJ)
制作:テレビ朝日、MMJ
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