『インサイド・ヘッド』なぜ“カナシミ”は必要なのか? イマジネーション豊かな“頭の中”

 ディズニー&ピクサーの最新作『インサイド・ヘッド2』が、8月1日から日本で公開されている。本作はアメリカでは6月14日に公開され、アニメ映画として史上最速の、公開から19日で興行収入10億ドルを突破。6週目には『アナと雪の女王2』(2019年)を超えて世界興行収入14億6000万ドルを記録し、アニメ映画の歴代興行収入1位を獲得した。

 そんな大ヒット中のアニメ映画の前作『インサイド・ヘッド』(2015年)が、8月3日に『土曜プレミアム』(フジテレビ系)で放送される。アカデミー賞長編アニメーション賞を受賞した本作は、ピクサーらしい美しいアニメーションと、秀逸なストーリーで多くの人に愛されている。ここではそんな『インサイド・ヘッド』の魅力を探っていこう。

イマジネーションあふれる「頭の中」の世界

 11歳の少女ライリーの頭の中の司令部に暮らす5つの感情、ヨロコビ、カナシミ、ビビリ、ムカムカ、イカリ。彼らの働きによって明るく幸せに育ったライリーだったが、田舎町から大都会サンフランシスコへの引っ越しでライリーに変化が起こる。ライリーの性格を形作る「特別な思い出」が、カナシミが触れたことで「悲しい思い出」に変わってしまったのだ。「特別な思い出」を「楽しい思い出」のまま守ろうとしたヨロコビは、カナシミとともに司令部の外に吸い出されてしまう。2人は頭の中で何が起こっているのかを初めて知りながら、司令部に戻るべく奔走する。

 本作は「頭の中」の世界を舞台としており、擬人化された感情たちが活き活きと表現されている。そこでは「特別な思い出」や、それが形作る「性格の島」「思い出の保管場所」「記憶のゴミ捨て場」などを巡り、イマジネーションにあふれた世界が描かれていく。この設定には、なるほどと思わされると同時に、自分の頭の中にもこんな楽しい世界が広がっているのではないかと観る者を引き込む力がある。それはやはりピクサー作品特有の映像の美しさの力でもあり、現実の世界と頭の中の世界の質感の違い、人間のキャラクターの髪の毛などのリアルさと、粒子で表現された感情たちの独特な質感の差によって生み出されている部分もあるだろう。

 それぞれの思い出は、ヨロコビの黄色、カナシミの青、ビビリの紫、ムカムカの緑、そしてイカリの赤など、そのときの感情によって色分けされている。さらに地面や「考えの列車」は濃淡の違うピンクだったり、かわいらしいデザインだったりと、観ているだけでも楽しい。

関連記事